2010.8/16_岡山・山陰旅(4)【廃墟】湯原観光劇場
さて温泉。温泉に入りたいなー。かの有名な露天風呂;湯原ダムの直下にある「砂原温泉」とは何処ぞや。
車を走らせていて、なんかわけのわからん道に迷いこんだ。ここはどこだ。よくわからんが温泉街には来たらしい。もう一度同じところに行けと言われても多分辿り着かない。カーブもきついしちょっと狭いし・・・ハンドルを危うげに切りながら駆け抜けていたら、
カーブの向こうから明らかにヤヴァイ物件が目に飛び込んできた。
( ╹◡╹) あっ??
(ノ・_・)ノ キキーーーーーー。
ブレーキ!
速攻で停車。
あかん、今何か見えた。あれは
あれはなんだ。
ああーストリップ劇場か。温泉街によくあるよね。最近減ったけど。
なんだかとても嫌な感じで古風だ。これは既に廃墟か? 素人目にも分かる、濃厚な妖気。これは、見てはいけないものを見てしまったのか。と思ったら小唄氏とタクちゃんの様子があからさまにおかしい。「これは…」「噂には聞いていたが…」「うむう…」どうやら有名廃墟物件らしい。
無言で臨戦態勢をとる2人。おずおずと小作人のようについていく私。
うへぇ。
( ー_ー)ノ 急遽バトル開始。
周囲には普通に民家や自営業くさいオフィスなどが並んでいるし、車の往来も少ないとは言え普通にながれているので、3人そろってダメなキャッツアイみたいに足取り軽くポンポンと階段へ。忍びの足音。
…階段へ行く前に前戯のようにして、引いて一枚。
緑色になってるけど紫陽花がなぜか妙に綺麗に感じました。
背徳の行為と、真夏の昼下がりにおよそ似つかわしくない雰囲気を孕んだこの妖気への恐れが、視界を狂わせています。あー緊張する。
正面に回り込んでから、けばけばしいビニールで覆われた鉄階段を上ります。好都合なことに、ストリップ入場客を人の目から守る機能が今ここで我々を守っている!ありがたいことです。
湯原温泉郷とストリップの関係について調べていたら、このようなサイトを見つけました。
【美作三湯命名50周年「現代温泉事情」 リポート湯原温泉いま・むかし 】
★Link http://www.net626.co.jp/rekisi/
1952年2月着工し、1955年3月竣工した「湯原ダム」から観光地としてのアイデンティティーを強く持ち始める湯原温泉郷についての部分を抜粋・引用します。
昭和30年から40年の間に旅館の件数は、一気に21軒に増えています。現存する統計資料には40年以前の物はないのですが先のグラフから想像するにダム建設当時は、精々年間3万人程度の年間宿泊者数であったと思いますのでこの10年間に観光客は、3倍の10万人に旅館も4倍に増え21軒になった事になります。40年代に入っても勢いは衰えません。昭和47年のオイルショックまでにさらに旅館の件数は増え、28軒になっています。増築も行われ総宿泊収容人数は、3千名までになっています。
この20年あまりに渡る時代は、夢のような時代でした。狭い温泉街の中に土産物店が14軒あまり、飲食店やスナックなどが20軒程、ストリップ小屋が12軒と言った様相でした。この時期、芸者の置屋や検番も多く登録さてた芸者数は120名を越えたこともありました。夕刻ともなると旅館のお座敷に向かう芸者衆の艶姿が温泉街の風情を盛り上げた物です。「一坪の土地が温泉街に有れば一家四人が暮らしていける。」そう言われたのもこの頃です。
( ・_ ;)そして時は2010年。
もう高度成長期の時分から見れば、すっげえ未来の世界なんですよね。
少なくとも観光における旅行者のスタイルが変化し、個人旅行における温泉へのコアな関心は高まったが、観光先でのストリップへのニーズはほぼ絶滅した。
いくら私が金を持っていても、観光先でストリップを観ようという発想がまず無いことに気付く。
これが時代というもの?
謎のマット的なものが左側にもたせかけてある。館内設備?
毒気のある赤と緑のビニールが撮り甲斐がある。
尤も、本当に楽に撮れるのはここから入口の扉まで。
湯原観光劇場の入口付近。
いらっしゃいませが南国的だ。何が表で何が裏に来てるのかよく分からん。
このチープ感は興奮する。
入場料3000円とは安い。
さていかなる空間が待ち構えているのか??
南国風味の絵。
情熱的で艶めかしいが、その内側からは新聞紙が!
まるで中学・高校の文化祭だ。だがそれがいい!
( >_<)なんかワクワクしてるな俺。
先程までの「津山プラザホテル」より更に臨戦態勢だ。こっちは本物の、熟れて食べ時の廃墟。
正面突破。すると受付フロアが。
この祭りのような内装はどうだ。
こういうのを待っていた。提灯に会釈。こんにちはー。
少し右側へずらして撮影。
神棚に少しだけ礼をして撮る。
照明と提灯とその他諸々の物品が物々しい。
丸みを帯びたイスだけはプリッとしながらたたずんでいる。
背景の弱サイケデリックさは一体何だ。
受付の奥に、その先へと続く扉があった。
明らかにめちゃくちゃ暗い。この時点でも、正面玄関からの採光だけが唯一の明かりだ。
振り返ってもう一度階段を。
朽ちたモンスターの咽喉の中から口を見上げているような心境です。
アンデッド祭り開催中。
ホテルやタクシー会社の電話番号が手書きでずらり。
太いマジックで書かれ、色あせた紙に、時の流れを感じる。
--------------------------------------------------------
★Link;http://www.net626.co.jp/banduke.htm
各温泉にクリックで飛べますぜ。
--------------------------------------------------------
またしても撮影に全神経を使っていたら小唄氏とタクちゃんは先へと進んでいた。
後を追うが、次の扉までの通路が何も見えない。真っ暗だ。
完全に手探りで進む。じり・・・じり・・・。
すぐに扉の取っ手らしきものをつかんだ。
開くと…
( >_<) まっくら。
うあああああ
あああああああああ
見えん。
何も見えん。
その時、サッと光が一条。
「足元気ぃつけてくださいー」「見えますー?」 あの二人はしっかりライトを装備していたのだ。
廃墟慣れしている!
おそらく我々の立っている暗闇の真っただ中が、ストリップ劇場のメインステージであることは分かった。
手足を使ってまさぐりながらじわりじわりと進むと、客席らしきものが並んでいることが分かったのだ。
急な段差や、穴、不安定な足場、危険物がないかを探りつつ進む。
ライトのおかげで相当見えるようになった。
「あ、ドアがこっちにもある」
開いてもらうと太陽の光が少しは差し込んだ。
人生初のストリップ劇場。その姿が徐々に明らかになる。
うわあ。円だ。
背もたれもない、円盤状の椅子が並ぶ。
漫画等の作中でしか触れたことのない現場に、実際に立ち会うと身震いする。
面白い。シュールだ。
無人。美しい。
しかしこの写真には嘘がある。
こんなに明るくないのだ。現場はもっともっと暗い。
なんでこんなことに…。
この写真はEOS 5D Mark IIが大人げない本気を出したせいで普通に見えるが、実際はもっと暗く、AFでピントが合わなかった。
祭り!
和風の高揚感がダウナーで愉快だ。
オタフクの顔がいい。緊張感ゼロだ。
これは熱い。
少し遠い過去にしか流通しなかったポスター、宣伝広告のたぐい。
それもローカル、ご当地のみの希少種とくれば、熱い。
夢体験ですよ、夢体験!
「し・よ 」 ( ゚q ゚ )うはっ。
このクセのある年齢不詳の淫婦も( ゚q ゚ )うはっ。
生きててよかった。
椅子。
どれほどの男達の尻を支え、どれほどの秘めやかな興奮を下支えしてきたのだろう。
ここには夜と湯に隠された男達の夢と現実の物語があったのだ、
ズキュゥゥン。
誰も立たない舞台の上で、マイクは主人公を待っている。
照らしてくれたライトでその影が立ち上がった。
不遜ながら、舞台へ。
小さな環だ。空間も大きなものではない。
だがここは良い。
マイクスタンドの足元のガムテープすら愛おしい。
参考までに、
手持ちのコンパクトデジタル;リコーGR D2で撮影すると、この有様。
通常のカメラでフラッシュを焚くとまともには撮れない。
廃墟は暗い。誰かにライトを持ってもらって、照射部にAFのピントを合わせて撮るとかしないと対応できない場面が多かった。
真正面から。リコーGR D2。
感度1600、フラッシュ。
通常はこんな感じにしか写らない。極端な悪条件下ではやはりマシンの性能が物を言う。
メインデッシュ終了。
さて帰るか・・・
・・・と思いきや、
さらにその先があった。
呪わしくなってきた。
フラッシュを当ててやっと気付いた。ステージの壁面が無茶苦茶怖い。
明るみで見たらただ滑稽なだけだろうが、静寂の暗闇の中で、一人で見たら小便をちびる。
消防団のつもりなのか…。
とにもかくにも、この裏に回り込む。
舞台のソデから、物件はまだ奥へと続いていた。
板張りの安普請な廊下と、階段があった。
暗すぎてここからは照明の力が必須、ライトの明かりに後ろから慎重についていく。
床があまりにミシミシ言うので3人固まっての移動が怖かった。
2階に上がると、予想を遥かに裏切る展開が待っていた。一般的な住居のような部屋だったのだ。
これも出演者の控室なのか何なのか・・・は、全く判らない。
判別するための資料も乏しすぎた。
現場は暗いし、誰かが「侵入者がいるようだが」と踏み込んできたらイヤだなあと警戒していたし。
そのうちの一室、
もうなんか、帰っていいすか俺。
( ・_ ;) 怖いよう。。。
さっきまでの宴、祭りのテンションは一転。恐ろしく生々しい生活感へ、それも肌にべちゃっと張り付くぐらいに濃厚な、土着の生活へ包まれてしまった。生々しいよう。この置物の意味がまるで分からん。
部屋が2〜3室続いていた。
枯れることのない造花はかつて舞台の装飾に使われたのだろう。
段ボールに叩き込まれているが無人となった今も自分の使命は全うしているようにも見える。
廊下は歩を進める度に床板が沈み込み、そのまま踏み抜いてしまうのではないかと怖くなる。
外の光が差し込んで、気が和らぐ。
ここにも、未だ役割を果たし続ける花が。
前進あるのみ。
更なる部屋へ。
おかあさんらめえええええ( ・_ ;)
もうどうしようもねえよ!
がんばって、がんばった結果、こうなったんだな。
もう何も言わん。誰も責めん。ゆっくり休んでくれ。
合掌。
驚くべきことにその先には、反対側へと部屋が続いていた。コの字型になっていたのだ。
しかしそこからは不可侵の領域だった。
あまりにも、民家そのものだったのだ。
これは・・・。
廃墟などと呼んでいいものか。いや、これは民家だ。
酒瓶がやたらと記念に置いてあるのも商売柄か。
何らかの思い出が色濃く宿っている瓶なのかもしれない。
だが私は気が気ではなかった。
これは廃墟とは言わない。これは生活空間だ。他人様の領域だ。
できるだけ具体的なものは見ないようにし、何物にも手を触れないようにした。
怖かったのだ。
かつてここに住んでいた者たちの体温や気配に取り込まれて、アウトサイダーとして闖入したはずの自己を溶かされ、何か良からぬ作用を引き起こすのではないかと思うと、気が気ではなかった。
あえて写していないが周囲には先程の「津山プラザホテル」並みに、家計簿やら個人的なメモやら、劇場の収支に関わる帳簿や非常にプライベートなものが散乱している。
完成度の異常に高い居間。
全くと言って良いほど原形を留めている。
いいのか。これはよくない。
全然よくない。
さっさと重機でぶっ壊されるべきだったんだとか思う。
凄く嫌な感じで苦しい。
私は霊とか呪縛のたぐいは信じていない、が、何か重くて生々しいものが呼吸の度に臓腑に流れ込んでくるような気配がして、とてもイヤだった。入ってはいけないところに居るのだということは分かっていた。早く出よう。そして温泉につかって、全てを流し去るんだ。でないと、よくない。
よくない。
全然よくない。
生活用品がそのままで打ち捨てられている。表現するなら「着の身着のまま」で一家は脱出したというところか。
これはどういうことだ。
深刻な経済事情。借金や税金の滞納、取立。債務からの逃げか。
不吉なものしか感じない。
もう沢山だ。
このままでは本当によくない。何か・・・べっとりとしてくる。
重い。
ミシミシ言わせて階段を下りる。
先程のメインステージとは別の道を見つけ、進んでみた。
また生々しい部屋が出てきたら本当にイヤだなあと唾を飲み込む。本当にイヤだ。
しかし「その先が見たい」という本能は抑えられない。
見るだけ・・・
( ゚〜゚ )ノ ギャー。
こういうのを待っていました。
こうでなくては!
商用に特化した「設備」「施設」「システム」が撮りたい。
イヤな感じを振り払ってじっくりと見る。
物置のように雑然としていて、荒れ具合はこちらのステージの方が格段に上。
足元に散乱する町役場や税務署からの通知。
資金繰りがショートしていたことは疑う余地もなさそうだ。
あまり本格的には関わりたくないので、具体的な部分は一切見ない。
知らない、知らない。
そんなことより、
ステ−ジ壁面の絵がこれ。
一体何処に行こうというのか・・・お手製の飾りや絵には深遠な謎が横たわっている。
コンドルだか鷲だか知らんが、ここはアメリカの砂漠地帯なのか。
どんなストリップが展開されていたのか気になる。
第一ステージよりずっと明るくて撮りやすい。
それでもピンが甘かったりして・・・。
イスがいい。
撤去の途中であきらめて投げ出したような状況。
切り口次第で見え方が千差万別、魔物のように表情を変えてくるのは面白い。
写真に飽きないのは、その力ゆえだなーと思ったりした。
暑い。
せっかくだからもう一発撮っておこう。
もったいねえ、もったいねえ。
いい被写体とは何度でも斬り合いたいな。
恋愛みたいなもんだな。
廃墟と恋愛なんて報われないけど。
出た、
オロナミンオンリー自販機。
単品勝負とは男らしい。昔はこういうの田舎にちょこちょこ立っていたな。
先の方にある鉄扉を開けると、元の入口に外側を周回して戻ってきた。
なるほどループか。
非常に魅力的な空間を堪能し、貴重な撮影ができた。
と同時に、自分というものが押し潰されそうなぐらい重くて生々しい生活感のイヤな感じを身に受けた。
単に、不法侵入したからというのではない。
見ず知らずの家庭の残留思念に取り込まれて溶かされる。
まるで放射能被曝だ。立ち直るきっかけがほしい。
( ・_ ;) 温泉はやく入りましょう!
→湯原ダム直下の砂原温泉へ続く。