2015.9.20 【登山】水平歩道(3) 仙人谷ダム、高熱隧道
本題に入ろう。吉村昭「高熱隧道」だ。
小学生の頃から黒部第四発電所、黒部ダムの開発および黒部渓谷の尋常ならざる凶暴性に異様な関心を寄せてきた私であるが、それらの力の真髄を語るものが、小説「高熱隧道」である。
その舞台が1時間足らずのところにある。
小説・情報上の世界と、物理の世界とがぴったりと重なり合う瞬間が来たのだ。これを人々は「聖地巡礼」と呼んでいたのか。アニヲタの心境を激しく理解した瞬間でもあった。南無。
関西電力主催の見学ツアーに参加しなければその核心部に触れることは出来ないが、関電施設の一部を登山道が間借りしているという他に類を見ないコースである。私と小唄氏はプールを待ちわびて小便を漏らしそうな餓鬼の顔をして荷物を置き、仙人谷ダムへ足早に駆け出した。
14:45出発。ザック置いて空身。
一時的にDB的な重量ドーピング現象(戦闘中に重い胴着を脱ぎ捨ててキャラがパワーアップすること)
を生じせしめ、躍動的に移動。シュッシュッシュッ
10分程の急登をがまんするとまた水平が復活する。
ばんざい。
清々しい崩落ですなあ。上を乗り越えます。
トンネル。幻想的
・・・と思ったらすごい勢いでトレイルランの人が追い抜いていった。え?
もう15時だが??(この先の宿泊可能場所は4時間の仙人温泉、8~9時間の黒部ダムしかない)
もしかして関電職員ですかね。
地図にない「権現峠」。油断すると頭を打つ。
15:10 関電宿舎へ降りる分岐(正規ルート)
下らず真っ直ぐ行く道も続いていて、私はそのまま直進してしまった。
ロープで通行禁止にしてあるが、岩の崩落ドメのロープが直前にあり、混同してしまった。
急な下りが続く。乳酸ハァハァ。。
15:20 関電人見平宿舎/「人見寮」
でかい( ゚q ゚ )
文明の香り( ゚q ゚ )
圧倒されてしまった。ツヤツヤだ。そしてデカい。
黒部の山奥にいたはずが感覚が狂う。
どうも2011年とか最近建てたようでツヤツヤ。
2棟目出現。しかし綺麗に平地だ。テント張るやつとか出そうな。
シェルター式の通路が延びている。冬の勤務もばっちり。
新人研修の洗礼でここに放り込んだりするのかな。
夏季は周りの山に行けて嬉しいが、冬季はモグラ生活ね。
これより登山道が関電施設を通ります。開門。ガチャ
テント張るなってさ。まあ許すとテントだらけになるよね。
ここから登山道は冴えに冴えわたり、高熱隧道が姿を現す。
\(^o^)/
\(^o^)/\(^o^)/
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
あれ
なんか暑い。
進むと全身の肌を押さえられるように暑い。
さわやかな外気を押しのける。奥に巨大な獣でも眠っているかのよう。
暑い。
気温と湿度が上がり、気持ちの悪い圧迫感。レンズが一気に曇った。
これが高熱隧道の気配か。
暑い。
空気が重い。
こわい/(^o^)\
へんなガス吸ってしんだりせえへんかな
※しにません
関電の線路に出た。これは何がどうなっているのだうか。
だうか。
「上部軌道」(関西電力黒部専用鉄道)である。
この線は欅平から黒部第四発電所まで延びており、見学ツアーに参加する以外は
一般人が乗ることはできない。
登山者は専用鉄道線路を直角に横断することができる。 高熱隧道の核心部は専用鉄道の奥に潜んでいる。今では冷却の配管が施されて40℃程度に抑えられているが、本来は160℃を超える熱を抱えた、凶暴な岩盤である。小説では幾度も人智を超えていく様子が克明に描かれ、人間の営為vs黒部の底知れぬ潜在力が苛烈なラリーを繰り広げる。その緊張感と危機感は、麻薬的な魅力を帯びる。
黒部は人智を超えた生き物だ
という解釈でだいたい合ってると思う。
上部軌道。
周囲を孤立された中、苛烈を極める自然相手に戦った軍の砦を見る心境。
\(^o^)/ トロッコ裏ステージ
今にも途中乗車できそうですけれどダメなんですかね。
だめ、
あかんか
欅平までの観光トロッコの先に、こんな裏ステージがあったとは・・・
胸熱展開に深い興奮を覚えます。
欅平にある黒部第三発電所での発電のために1940年(昭和15年)に完成。
戦前にこの山奥で、これだけの大規模な建設を行ったと
( ゚q ゚ ) おれは唸った。しんじられまへん
そないなあほな話ありますかいな 戦前でっせ
あほな
あほか、あほな、あほや、
おれがふらふらと回っている真下には、
周囲の岩石とダムが溶け合って、異様な模様を刻んでいる。
近代化産業遺産。
奥へ行きます。
この光景を目の当たりにして、私はこれまで廃墟を愛でてきたが、現役施設の方が何倍も陰影が深くて美しいのではと衝撃を受けた。小唄氏とも話をしたが、「どこそこ廃墟を攻略した、潜入した」だの、そういう男子的な発想に基づくアプローチは全く有効ではないのだと知った。本当に美しいものを知らねばならない。高熱隧道から寄せてくる熱の重みで、私は頭が冴えた。「うへへえへへ美へえへへへ」「ゲヘッゲヘッ美っぅうえッヘッヘッヘッ」だめだ。
小唄氏も祈るように撮影。
登山で通過するにはあまりに勿体ない、勿体ない
\(^o^)/ ああ。
急にぬくもり出たなwww
通路を抜けると仙人谷ダムの上に出るのであった。
出ました。戦隊の特撮に来たんじゃないんだが。
工事中のような祝祭感の漂う色彩感覚。こちら側(西側)は仙人温泉、剣岳方面の道に続いている。
先ほどダムを見ていた上部軌道を眺める。
下の黒部川の表情が、今まで見た川のどれとも似ていない。魔物だ。
超水量
ドゴオオオオ
/(^o^)\ なにこれ祭り!??
見ると排水口になっていて、膨大な水が噴出している。
なんだなんだ どこからよ どこ排水の
( ゚q ゚ ) オロオロ
基本的に独りで佇んでいると怖くなるような場所。色々ありすぎて発狂する。
二人で来てよかった。陽性症状でるわ。
18時の晩飯、17時半からの温泉男子入浴タイムに間に合うよう引き返す。
\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/\(^o^)/
私はもうなんかだめです わたしはだめ
もうだめ
正気を取戻し、16時に踵を返して、例の急登を登り返し、45分かけて小屋にカムバック。
疲労のダメ押しが効いて、小唄氏は撃沈。気の毒なことをしたかも。
だが往復と現地滞在で丸2時間を費やした。これは当日中に済ませておいて良かった。
入浴は見送った。飯の後にしよう。
何匹もの蚊にたかられながら吉村昭「高熱隧道」を読む。内臓がぞわぞわする。
ああダイナマイトが炸裂して作業者が四散した。ああ肉片地獄。ああ。
18:00 おいしいカレー
\(^o^)/ おかわり自由のカレー
おやっさん「コメは地元のササニシキです。野菜はうちの実家で採れた野菜です」
最高ってことですね\(^o^)/
19時すぎから小屋のおやっさん&仲間たちを取材したTV番組の録画集上映会。
凄まじい活動の実態である。一般客が来る前に、欅平の遊歩道に面した崖から丹念に岩を落とし、トロッコ列車の橋がかかる岸壁のチェックを行い、水平歩道のメンテを行い、阿曽原温泉小屋の組み立てと解体を行う。超人である。
そして皆が映像に釘付けの中、我々は露天温泉を堪能した。
注ぎ込む新鮮な湯の量が多く、浴槽の中は綺麗だった。
大勢の汗を受け止めて、溜め置かれた湯がドロドロなのではと恐れていたが
杞憂でした。
\(^o^)/ 帰るのが惜しい。つづく。