H28.11月某日 【ART】大阪国際メディア図書館 ~潜入~
(― H28.11/30(水)23時をもって、クラウドファンディング企画は終了しました。 ―)
先日、チラッとご紹介した大阪国際メディア図書館、
かねてよりご紹介していた「クラウドファンディング 一口館長募集」は
本日11/28(月)、目標金額の100万円を達成したとのことです。
あれ。/(^o^)\ いつのまに。
実施期間は11/30(水)までなので、
まだお得な各種特典パッケージは購入できます。
ただ、前回の私の記事では、
その実力の一端しかお見せしてはいなかった。
そう、図書館そのものの実力については、まだ触れていません。
どんな図書館なのかなと言いますと、
まあ阪急茨木市駅を降ります、そして商店街から歩(略)
着いた。
バーン (´-`)ノ こんちは。
入ると可愛いデザインが出迎えてくれますが、二手に分かれています。裏を読みすぎて右手の「土方商店」さんに行ってしまうと、セメントの商談は出来ても図書館には辿り着けません。素直に左折しましょう。
様々な展示・企画の情報がアップされているのでこのコーナーは重宝します。えらくなって大規模な企画展が出来るようになったら置いてもらえるので頑張りましょう。
図書館に入りました。
現代版モホリ=ナジっぽくてこの写真はたいへん好きです。
それよりも注目すべきは、入ってすぐ正面の書棚です。
ここには捕れたてぴちぴちの、魚市場の鮮魚のような書籍が並びます。
見てのとおり、最新の企画展の図録や注目すべき写真集、そして読みやすく使い物になる実用書がピックアップされており、
例えば左側の棚は、今年秋の国内展示で超目玉となっているトーマス・ルフ展(@東京国立近代美術館)と、杉本博司「ロスト・ヒューマン」展(@東京都写真美術館)の目録がありますね。
また同様に、今年に展示のあった東松照明(@広島市現代美術館)、石内都(@資生堂ギャラリー)の写真集もある。タイムリーな品揃えがまめに行われています。
最下段は、みんな泣くほど大好き/手こずるphotoshop、Illustratorの実用書。私も好きすぎて(手こずりすぎて)泣きました。泣いています。前が見えない(怒)。
左側の棚は、
動画系の実用書が多いですね。
私はキャパシティの問題から動画のドの字も触れていませんが、中には写真活動と動画制作とを二刀流でこなす強者もおり、そういう方々にとって役立ちそうなツール。さりげにナムジュン・パイクの展示(@ワタリウム美術館)冊子もあってポイント高い。
実用書は、授業の進行や生徒の関心度に応じて都度セレクトされており、授業で習った技術的なことを聴きっぱなしにしない体制がとられています。
この棚は裏に回り込んでも、
いっぱいあるんだ/(^o^)\
タイポグラフィ、デザイン関連本です。その他国内の写真集、BTなど月刊誌も逐一キャッチされている。 写真だけではなく守備範囲が幅広いのが特徴。
というのも「写真をやる人は、写真を極めれば良い」という時代はもう終わっていて、「写真を含むメディア、芸術全般を知らなければ厳しい」というのが昨今です。
プロカメラマンは話がまた別だと思いますが、「作家」系の世界は常に揺らぎに満ちていて、写真を真っ当にやるのは当然のこととして、よそのジャンルとの異種混淆が軽やかに起きまくっています。揺らぎまくっとんな。
先述のトーマス・ルフは良い例で、写真家という肩書きながら、もはや自分で写真を撮っていないという有様です。杉本博司も、大量の珍奇な骨董品を迷路のように置きまくるという楽しくて厄介な展示を繰り広げており、その中の一部として写真を入れてきたりする。もう現代の写真家はそういうことを平気で仕掛けてくる時代になっているので、泣きながら勉強するしかありません。手に負えない時代です。正直きつい(たのしい)(きつい)。
(※個人的見解です。体感には個人差があります。)
そういうわけで、大阪国際メディア図書館は、常に新しい図書の調達が必要であり、そのための資金集めということで、このたびの「クラウドファンディング」企画が考案された次第です。
もちろん「歴史に学ぶ」というスタンスが根底にあります。
これはガチもんの「LIFE」誌で、たいへんな貴重本。しかし許可を得ればすぐ閲覧できます。破格の環境ですが、他に見たい本がありすぎて全く見れていません。だめだ。人生損してる。泊まり込みで図書合宿したい。ていうか誇張ではなく実際本当にそうで、優先順位の高い書籍が多すぎてお手上げ状態です。
どういうことか。
こういう感じで、
まあ本棚があるんですけれども、
私達が常にたむろするのがブルーの本棚、写真集が特集されていて、
新旧いろいろとあって、特にバウハウスが目に毒ですね。私はバウハウスやモホリ=ナジ、マン・レイが好きなのでちょいちょい立ち読みします。福山雅治×植田正治がありますね。かと思ったら名取洋之助や土門拳がありますね。仲が悪かったらしいですがあの世で仲良くしてるかなあと心配になりますね。わあい。
あとは手に負えなくてですね、
Gの列はアンドレアス・グルスキーが輝いています。スーパーマーケットの棚とカミオカンデの内部が等価で張り合うという恐ろしい消費世界フォトを繰り出す作家です。
あれ。マリオ・ジャコメッリがあるではないか。見落としていた。ラルフ・ギブソンもまだ見ていない。
地味に私の好きなアンドレアス・ゲフェラーがあることに今気付いたので、次回読まないといけない。上を見上げて電柱を撮ったりするとこの作家に負けます。
上のEの列もウィリアム・エグルストンとかリー・フリードランダーがチラチラ見えていて目に毒です。育児休暇とかと並んで図書休暇ができないものか。
シンディ・シャーマンの写真集が色々あるので、昼めしの合間に不朽の名作をたのしみましょう。 この人の七変化は本当にすごい。森村泰昌に関心がある人は、ぜひ彼女と比較しないといけません。
不朽の名作と言えば、
みんな大好きダイアン・アーバスが豊富にあります。わあい。昼めしの合間にたのしみましょう。
色んな作用があるので食欲がいまいち起きなくなります。この人が市井の一般人を撮ったときの暴走というか悪意がすごくて、もしこの世界の圧倒的多数を占める「普通の人」をこんな風に捉えて感じていたとしたら、滅茶苦茶に生きるのがきついだろうなあと思います。凄い。実際若くして自害した。泣けます。昼めしを食べる気が少々失せます。双子はかわいい。
ゲルハルト・リヒターも図書館にはちょいちょいあります。重要なので押さえておきたい。写真をやりたいのか絵画や映像をやりたいのか見失ってしまう時には、徹底的にクロスオーバーさせたら良いんじゃないかなと思います。
今道子(こん みちこ)は魚の頭が大量に並べられたモノクロ写真がぎらぎらしていて、見る者の眼の逃げ場を奪います。見ているはずが見られている。ぎゃああ。
また、ドゥエイン・マイケルズが気になります。古典で、60年代に「シークエンス」という連続する写真で映像的なイメージを表わします。
この風景きもちわるいなー。とか言って授業後だいたいこうやって物色していたらすぐ外が真っ暗になります。風景写真は良いですね。「風景とは何か」とクラスメートと口論に陥っても、ちゃんとアンセル・アダムスとロバート・アダムスのどちらも揃っているので議論に花が咲きます。したことはありませんが。
通常の写真集だけでなく、評論や美術館の展示図録もあります。図録の収集は重要です。展示は、キュレーターの手腕や問題意識によって、作家らの活動と時代の動きとを体系的に結びつける試みがなされています。その解説や評論を読んで「あ、この何の変哲もない写真って、こういう意味があったのか」と初めて理解できる、ということがあります。というか解説を読み込まないと全く意味わかりません。現代の写真はテキストと不可分である、という特徴があります。ということを笠原美智子氏は言っていました。先生も言っていました。うへえ。
館内の奥の方には希少本ケースがあって、
名だたる日本人作家の貴重な写真集が保管されています。東松照明、森山大道、深瀬昌久、鈴木清、・・・いっぱいある。どうしたらいいんだろう。このコーナーは凄いです、大阪国際メディア図書館の誇る最高の財産の一つと思いますが、素人目にも貴重なのがよく分かるので怖くて触れません。図書館設立に尽力された畑先生と中川先生の力が輝いています。
これも許可をもらえば全部閲覧できるという素晴らしいシステムで、
いつ読むんだ私。
寿命の方が先に来るような気がする。
図書館の力はこれだけではございません。
写真だけか? いえ。それ以外の蔵書が実に豊かで、総合的に世界観を広げられるのが特徴。
ロゴ、デザインの研究が無限にできる環境。
果てしない感性の熱帯雨林のよう。
タイポグラフィ年鑑はけっこう高額で、13,000円ぐらいする。個人で買うにはかなり気合のいるお値段。よってこうしてずらりと揃っているのは非常に有難いことです。
デザイン関連。見るからに面白そう。田中一光は好きだなあ。
こういう棚が何面もあり、物量が凄まじく、大変なことになっています。世界的にも高名なデザイナー・奥村昭夫先生などは「この図書館にある本全部読んで頭に叩き込んだらよろしい」と仰ったが、妻や子供を人質に取られていてもなかなかそこまで出来ません。そもそも妻も子供もいません。どうしたらいいんだ。
更には映像のアーカイブも凄くて、
ドジャー/(^o^)\ 洪水や。
「サイエンスチャンネル」やドキュメンタリー等が収蔵されているがあまりの点数と、そしてVHSということもあって、ノーマークです。いつかデジタル図書館となって、会員限定でWebログインから動画閲覧できるようになったら良いのですが。篤志家が良い画像サーバーを置いてくれる日を待ち望みます。
もちろんメディアとは何か、という命題に向き合っている教育機関なので、メディア関連本もある。
建築、都市論も揃っているよね。
他人事ではなく、私も「都市とは何か」ということの回答を自分なりに提示しないとだめなので、今年の冬はこのコーナーが私のお友達になることでしょう。わあい(白目)。
この図書館のポテンシャルが少しでも伝われば幸いです。
しかし大阪国際メディア図書館はここ、茨木市に来てまだ日が浅く、
多くの図書が未整理の状態で、眠りについています。
2015年4月に宝塚市・阪急逆瀬川駅前の「アピア」から移転してきたばかりです。
眠れる獅子状態の棚。
宝探し的に未整理棚をうろうろするのは楽しいですが。
その日の体調とかテンションによって見つかる本が変わるといったことがあります。ジャンルを問わない展示の目録が渦巻いていて、古典絵画もあれば茶器もあるし、ポップアートもあるし、ジャクソン・ポロックや前衛芸術が発見されたり、人類史の坩堝のような状態で、「ああ、世界は深淵だなあ」と目が眩みます。
さて最後に取り上げたいのは、こちら。
奈良原一高(ならはら いっこう)「時空の鏡」
奈良原一高というのは、戦後日本の写真界をリードした写真家の一人で、現実とも虚構ともつかない極めて不思議で美しい、日本人離れした世界観を描き出した写真家です。
作品の世界観だけでなく、活動のあり方についても、戦前の写真家とはまた異なる発想を持った世代でした。
1959年には東松照明、川田喜久治、佐藤明、丹野章、細江英公らとセルフエージェンシー「VIVO」を結成し、個々人の自由な世界観や活動を尊重するなど、非常に新しい考え方を実践します。また、活動拠点は数年単位で移ろい、ヨーロッパやアメリカに行っては奥さんと暮らしたりして、国境を意識しない生き方をしていました。
「他に似ている作家が存在しない」という恐ろしい写真家で、あらゆるテクニックを駆使して非現実的で不思議な、それでいて非常に強度のしっかりとしたイメージを表わすことのできる、恐ろしい作家です。SFや物理学など、写真の世界とは異なるジャンルの世界観をかなり持っていた感があります。
一方で、ある種の極限状態を生きる人間のドキュメンタリーもしっかりと紡ぎだすことが出来るという、眼の強さ、語りの強さを備えた作家であり、恐ろしいですね、本当に恐ろしい人です、
つまり一目惚れしまして、私はこの人の世界観を研究テーマに設定して活動することにしました。今年の初夏の頃です。
数多くある写真集の中でも、この「時空の鏡」は発行が2004年と比較的新しく、また、彼の生涯を通じて重要な作品をうまい具合にピックアップしており、奈良原一高なる写真家を俯瞰して理解するには最適の一冊と言えます。
つまりこれは、
\(^o^)/学校が買ってくれました。
私が奈良原一高やりますとワーワー言っていたので、研究資料として買ってくださったわけです。すなわち、この図書館はそういう場で、教育や研究のために必要となれば、随時新たに購入していくという柔軟な運営方針を執っています。
やはり、写真集は高価です。一冊が1万円を超えたりします。この「時空の鏡」は12,000円もします。なかなか個人で買い揃えることは難しい。
それは図書館にとっても同様ですが、そこで、無数に世の中に出回っている書籍の中から、一体どれが重要なのかを選び抜き、投資し、収蔵することで、広く利用者に資する環境を作り出しているわけです。
個人で買える写真集の量など、知れていて、例えば私の家だと、
一部だけですがこんな感じで、
あるっちゃあるけど、全部合わせてこれの2~3倍ぐらいしかありません。
そういうわけで、
あれっ。
これは。
\( ゚q ゚ )/
\( ゚q ゚ )/ 奈良原一高「時空の鏡」。
すいません先生。
\( ゚q ゚ )/ 持ってました。
こういう悲劇がおきないためにも、
投資いただいて、「一口館長」になっていただいて、
「うちの家には○○という写真集は既にあるから、△△という写真集を買ってください」
というリクエストを直接出していただくのが、いちばんみんな幸せになると思いますので、ぜひ皆さん、幸せになってください。
( ゚q ゚ ) 謎のカミングアウト回でした。幸せになりましょう。