nekoSLASH_記録編(日常・登山)

『nekoSLASH』分家。日常、登山、廃墟、珍スポットの記録集。

【登山】R4.11/20 金糞岳・白倉岳・奥山(余呉湖で前泊~日帰り)前編/概要、前泊、当日朝~登山口・開始

伊吹山のさらに北、滋賀県と岐阜県の県境に「金糞岳」(かなくそだけ)という、名前のインパクトの凄すぎる山がある。しかし実体は「地味で歩きやすいけど往復8~9時間かかるロングコースの山」なのだという。よしわかったレッツゴー。

 

メンバーは4人山の師匠・オタケ氏と私・hypernekoの山きちがいペアと、オサ氏とみっこはんの女流写真家ペア、それぞれ別行動で現地入り・現地集合をします。珍しく大人数です。4人で「多い」と感じる程度の人生を送っています。ミニマルリア充といいます。電通さん市場調査お願いします。ウェイ。

 

我々山きちがい2人は、朝早くから起きての車移動が嫌だったので「深夜から麓に移動して現地テント泊」策をとり、女子二人は別便で早朝発、登山口で合流という作戦に。

 

一週間前からこの日は早朝・午後が雨天になる予報だった上に、雨が降ってない時間帯も風が強く冷え込むという悪条件で「一週間ずらした方がコンディション良いのでは・・・」と仲間からも提案が上がっていました。が、私「条件厳しい方が経験値が稼げますよ!!!」ブラック店長めいた返しで押し切る始末。社会は人を狂わせます。しかし結局、経験値を稼げたので、ブラックは真理です。

 

◆山の概要

「金糞岳(かなくそだけ)」、標高1,317m。

場所は本当に滋賀と岐阜の県境に立っていて、最寄りの市街地は滋賀県長浜市。

滋賀県の山では、最高峰「伊吹山」標高1,377mに次いで2位という、意外な伏兵です。殿様の右腕みたいな存在。滋賀、京都、大阪での1千m超は非常に珍しく、例えば近くには秀吉 vs 柴田勝家の戦で有名な「賤ケ岳(しずがたけ)」もあるが、たった421mしかない。関西での千m越えはエリートです。

 

伝説によるとですね。昔、伊吹山(の神様・多多美比古命)が金糞岳(の神様・浅井姫命)と、背の高さ比べをしたところ、金糞岳の背が一晩のうちに高くなって伊吹山が負け、立腹した伊吹山が金糞岳の首をぶった切り、飛んだ首が琵琶湖に落ちて「竹生島」になったとのこと。おじ・姪の関係で首切ってるんで、いかにブチギレだったか分かります。「一晩のうちに」というのが、深刻なドーピングなり詐欺なりの疑いがあります。つまり伊吹山はただの誠実で真っすぐな神だった疑惑も浮上。株が上がりました。

 

千mがせいぜいというのは、アルプス勢に比べると小物のように感じます。ギニュー特戦隊から見たベジータちゃんのようです。しかし数字だけでは分からない罠があります。それは「登山口の標高がそもそも低いため、フルに登らされる」ことで、今回は登山口で360m程度なので、約1千mを登らされます。登らされました。わあい。しかも滋賀の山は、でかい丘の連続体なので、歩行距離がすごい。足もげるわ(^<^)

もちろん標高の低さは難易度に直結していて、アルプスに比べると標高が格段に低い分、天候の変化や気温の落ち込みがまだマシなため即・「死」に結び付くわけではない点。こんな晩秋にもヘラヘラと登れるわけです。アルプスでこれは無理。逆に夏の滋賀は平地に比べても大して気温が下がらず、くそ暑く、暑死します。こんな寒い時期こそ登るべきです。

 

さて、もう一つ気になる「金糞岳」というインパクト大きすぎる名前の由来ですが、これといった確証・資料がない。現地にいつものような解説の看板などはありませんでした。多くの山では縁起、伝承をPRしてくれているもんですが、一番解説してくれないと困る山に限って何もない笑。困った。

Webを探した限り、説として有力なのはやはり、かつて滋賀県北東部:伊吹山の周辺や長浜市あたりで製鉄をやっていた歴史があるということ。名前の由来は「金屎(かなくそ)」、鉱石を精錬した際に出るスラグ(かす)であろうと。

金糞岳について書く人書く人がwiki記事「草野川東俣谷に古い鉱山跡があり、周辺には製鉄遺跡がある」という一節をblog等で引用するものだから、Web上で出てくる情報はほぼこの一文になっており、逆に該当する鉱山跡を示した調査記事や、棄てられたスラグを示した情報は今のところ見つかっていない。もちろん登山中にもそんな歴史的な示唆に富んだものは一切見当たらなかった。

 

山の西隣、長浜市木之本町古橋には「古橋遺跡」として6~7世紀の製鉄炉が発掘されているので、山のある一帯が製鉄と深い関わりがあったことは間違いない。

 

◇「滋賀県の製鉄遺跡」滋賀県文化スポーツ部文化財保護課 大道和人

http://chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.fcp.or.jp/mahoron/pdf/2020/2020_tetu_yokoh%20(6).pdf

 

滋賀・琵琶湖というと、「水と緑」に日本海からの「風・雪」を掛け合わせた、透明度に満ちた印象を抱いていたが、思いもよらず「鉄・金属」という非透明の地属性が加わることになった。古代の近江・琵琶湖でロボット兵を作ってたりしませんか。ない。

 

 

◆前夜:11/19(金)22:40発 ~余呉湖(尾の呂ヶ浜)泊

大阪から山まで片道2時間半~3時間弱かかることと、長丁場の行程ゆえ朝6時~7時には登山スタートしたいため、前夜から現地入りをします。

 

そして野営地点は、少し離れるが山の西側にある「余呉湖」の湖畔に。

登山口=「高山キャンプ場」なのだが、ここはかなりちゃんとした区画・施設のキャンプ場で、営業時間も8:30~17:30と非常に限られており、適当にフラッと深夜早朝に車を放り込んだりテント張ったりできない模様。

takayama-camp.com

そのへんの案内が一切書いていない上に、現地も「キャンプ場利用者に限る」との注意書きが沢山あったので、あくまで営業時間内に受付をした施設利用者が対象なのだろうか。

 

「高山キャンプ場」を使わない場合、手前の名もなきフリー駐車場に停めるのが登山者のお約束のようだ。そこで車中泊 or テント泊をしてもよかったのだが、コンクリの上で寝るのは底冷えするし楽しくないので、師匠推薦の楽しいスポットにしました。

 

それが「余呉湖」の湖畔「尾の呂が浜」。

ほぼどこも人がいないので、キャンプ火起こしとか物騒なことをしない限り、そっと車を停めてテントを立てる分には問題なさそう。飯は家で食べてきて、後は寝るだけの状態に仕上げておる。

どういう利用者層の想定なのか、ここには駐車場と公衆トイレがある。観光バスでも立ち寄るのだろうか。とんでもない好立地。

 

「安倍氏の逝去以降、ネトウヨは存在感を示せていない」「左翼も最大の敵という支えを失ってしまった」「学生の頃のような無意味なことをする力がもう無い」「海外旅行とか行っておいてよかった」「なんであのときコタキナバル行ったんだっけ?」

人生を振り返りながら憂国の念を吐き、多賀SAでパンが高い肉巻きおにぎりが高いと物価高を恨み、けっきょく草餅とカップラーメンだけ買って、夜1時頃に余呉湖畔に到着。まっくら。想像以上にまっくら。民家も少なく、湖が夜の闇に沈んでいて全く見えない。なおかつ道も狭い。まっくら。ギャー(たのしい)

 

暗い。左右のどっちかに余呉湖があります。いや前方だっけか。そのぐらい真っ暗でよくわからない。琵琶湖があまりに大きすぎて感覚がバグってます。バグは人生に潤いを与える。

 

「尾の呂が浜」はコンパクトながら秀逸。公衆トイレは男女別、自動感知で明かりがつきます。最強です。雨がしのげる・水が使える・車が停められる、これはアウトドアでは神です。あまり頼り過ぎるとアウトドアでなくなるやつ。

 

暗闇に車止めとか隠れてるので気を付けましょう。オブジェとしては渋くて優秀。

 

1:10、張るだけ張って寝させてもらいますの図。

気温が8~9℃はあり、厳冬期用のシュラフを使ったので全く寒くな

ぐう。

 

 

 

 

深夜3時頃だろうか。

 

 

バラバラバラバラ言ってる。

 

 

うっせえ。

 

 

バラバラバララバラrバラ

 

 

うっせえな。

野生動物か? なんだ、鹿すか??

 

バラバラバラバラバラバラバラ

 

 

 

( ´ ¬`)  雨  で   す 。

 

 

 

天気予報がちゃんと当たった。ちくしょう。当たったる。

あーあー雨きた。

尿意もきた。

出しまするわ。出さんとこれ。

 

 

( ´ ¬`) つつつつめたいつめたい

 

テントから出入りする際に登山靴を脱ぎ履きするのがよくない。もたついて濡れます。山中以外ではクロックスを常備するのが良いです。あとテント泊では雨や夜露を防ぐのに靴をビニル袋に丸ごと放り込んでおくのが必須。

 

二度寝。

トイレの屋根を打ち付ける雨が、聞き慣れない音を鳴らすので、テント回りをへんな動物がウロウロしているような音に聞こえてならない。やだあ。

 

 

◆当日早朝:高山キャンプ場(登山口)へ移動 ~ 7:15 登山開始

5:30起床。 アー。眠い。

雨です。

若干弱まったっぽいけどまあ降ってます。天気予報の通り。このままいけば、朝から昼にかけては一旦「晴れ」に転じるはず。がんばりましょう。

 

あかんめっちゃ降ったる。

守らんとやばい。小走りで車のトランクに行ってレインウェアを引っ張り出し、トイレで着ます。意外と雨の量があり、上下ガードしないとテント撤収作業なんてやってられません。乱雑にテントを畳んでズブズブのままトランクに放り込みました。

テント内部もズブズブ、これはベンチレーターの扱いをしくじって、内部に雨水が垂れていたせいでもあります。ひいー。シュラフが濡れる。もし二日目も使うなら居住環境は最悪ですが、無事に下りてきて事なきを得ました。

 

思えばこれが本日の雨のピークで、そしてレインウェアの最初で最後の活躍でした。良いのか悪いのか。

 

 

しかし 5:47、LINE着信。

 

「おはようございます☀
 高山キャンプ場着きました!」

 

/(^o^)\ あかん早い。想定の倍ぐらい早い。女子がすごいねん。

荷造り間に合ってない やば。

 

6時過ぎ。急いでくるまを出します。テント濡らしてる場合じゃない。雨のせいです雨がわるい。まだ朝めし食べてないんすよ旦那。

しかしナビが所要時間48分ぐらい算出します。うそつけ。なんでや。Google Mapは33分やと言うていたぞ。

この違いは、Google Mapは一区間だけ高速道路を使うルートで、車ナビは無料優先で検索していたためだと後に発覚。この時点では知る由もありません。しかも、どえらく過酷な道へと追い込まれる。

 

県道546号。酷道です。キャンプ場と三輪神社を通って山を抜ける道ですが、冬季閉鎖されることから分かる通り、細くて狭くて、ぐねぐねしていて、時折片側が切れ落ちていたり、山の中を通ったり、酷い道です。しくじってもJAFに頼れなさそうな局面がちらほら。ある意味登山よりも危ない。試練です。草がめちゃくちゃに生えてて行く手を阻まれそうになる。

 

 

6:45、目当ての駐車場に着。

パン食って飯ります。この時点で雨はもう止んでいる。追撃の雨雲もあるかも知れないのと風の冷たさを恐れ、レインウェア上下は着たままにします。

結局、雨は降らず、稜線で風に吹かれるまでには相当な時間がかかったので、この判断は単に暑さで汗を増やしただけでした。難しい。

 

7:15 出発。

「長いルートなので、6時半には出発したい」とか言ってた(※主に私)のが、酷道と飯と荷造りでこの有様です。よくある話。ゆるいメンバーなのでこれがまかり通っていますが、人によっては喧嘩になるでしょう。平和にやりたいもんです。アー。

山の中の観光地のビジターセンターみたいな施設が「高山キャンプ場」だった。しっかりした施設で、これは適当に車停めたりできないなと理解。かなり客入りがあった。でかいテントを張ったりして。テントの概念が我々と違う。

 

 

◆登り:7:15 東俣谷川沿い ~ 8:12 白谷口(追分)~ 8:50 ①小森口(林道との交差)

さて今回のルートです。反時計回り:「中津尾根コース」で頂上まで登って、「花房コース」「白倉岳」「奥山」のトップをぐるっと回って下りてくる。以上。

詳細なルート看板が、登山届BOXとともに、キャンプ場入口にあります。

非常に詳細にポイントを示してくれていてありがたい反面、ルート上の高低差が分からないのと、コースタイムの見積もりが大きすぎて戸惑いますが、YAMAP投稿者のログとの間をとると「登り4時間、飯1時間、下り4時間」で見ておくとよさげ。

 

私以外の3名がYAMAPを使い、GPSでログを取りながら現在位置をリアルタイムで地図確認して歩きます。うわあDX登山や。私はというと昭文社の紙の地図シリーズに「金糞岳」がなく、やることがない。スマホバッテリー温存係(自称)です。あながち冗談ではなく全員YAMAPでバッテリー切れを起こすと救助が呼べなくなるので、誰か一人は歩く電池になった方がよさそう。

 

最初の「ダム管理道」歩きは小一時間ほど。屈伸、身体を温める程度の歩きです。

 

鳴ってなかったけど「鳴り岩」があったよ。かっこいい巨大岩。叩いて鳴らしたらいいんだろうか。

 

予想通り、全く寒くない。雨も風もない。自宅の底冷えの方が寒い。

晩秋~冬は動物・昆虫がいないので退屈。いい歳なので「恋人が浮気相手とくっついた」「仮想通貨が暴落した」「起業しない奴は社畜」などの血沸く話もなく、「あの柿はおいしそうですね」「そうですね、たいへん良い色です」等と、いい感じに枯れた会話を楽しみます。※実話です。 約1名がジャンプして柿の実を採ろうとしていました。あと5~60㎝は足りなさそうでした。ぴょん。

 

山の上のほうはチラチラと木が色づいており、紅葉がおとずれていて、パーティーは幸せになりました。ステータス異常「こうよう」:抑制系が優勢となってアドレナリンが減退し、判断力と瞬発力が鈍ります。なえ~。

 

8:12「白谷口(追分)」と思われるポイント(逆側から撮影)

左手へ分岐する道(この写真では右上奥へ続く道)が何だったのか不明。どうやら、以前使われていた「本流コース(深谷コース)」への道のようだ。今はMAPに「進入禁止」と書かれており、山行記事も見当たらない。謎である。何年前から閉鎖しているのか謎だが、もうルートは荒廃しているのではないか。

 

YAMAPログで金糞岳と言えば、この鉄の橋がお馴染みです。右手に少し写り込んでいるのはただの水門のようだ。謎い。門はほっといて左側をいきます。ここはルートが分かりづらいけどフェンス沿いのくっそ狭い隙間をいく。ここは狭すぎて見落としうる。登山プレートがあるのが救い。

 

ここからようやく山の中に入る。足元が落ち葉で全ふかふか。このふかふかフィールドは山全体に及んでいます。摩擦係数を減らしてホバー走行を可能にする効果がある。登りに不利やん。

そして特徴として、頂上付近に至るまでクリのイガが落ちている。栗の木が山の大部分に生えているようだ。そしてどれもイガだけしか残っていない。イノシシなど野生動物が中身を全部食べてしまっているのではないか。

 

山道の多くは落ち葉に覆われたなだらかな坂で、ハイキングコース的な優しさ。しかもすりばち状に窪んだ道が多く、アイレベル以上のところに木の根と石・地面のスリリングな絡まりが見えたりする。地味ながら怪奇さ、怪物度が高いものも潜んでいて、良い。

 

すりばち的、小さな谷間を登る場面が多い。下りルートでも頻出。登りは落ち葉で滑りやすいが、滑落や捻挫といった危険な場面が非常に少ない。下りは滑りを利用して一気に加速できるので非常に便利。そういう点でも金糞岳の難易度はかなり「低い」。いい奴じゃないか。友達になれる気がしてきた。カナさんとかカンちゃんとか呼び始めたら重症。

 

あ。文明が見えてきた。

 

「中津尾根コース」鳥越林道(車道)と2回クロスし、その1回目がここ「小森口」である。ちなみに飾りではなく本当に車で乗り付けて、ショートカットでここから登り始めることも可能。

 

8:50「小森口」。

 

ただの落書きではなく、黄色い矢印の先がこの先へと続く登山道です。あまりに入口が分かりづらすぎるための措置がこれ、車道に直書き。確かにそうでもしないとこの道わからんすよ、ほぼ草に同化しておる。絶対何人も道に迷ったやろ。

 

 

◆登り:8:50 ~ 9:03 小森頭 ~ 9:57 ②連状口(展望台)

また山の中の溝みたいなところを登っていきます。

いつもの山だとがっつりつづら折り坂連打や階段などで急登モードに入りそうなところ、ローギアでのゆるゆる坂が続き、平和であるため、全般的に「紅葉がきれいですね」「こちらの葉は黄色いです」「あっ、赤い実があります」「もみじが落ちています」「撮りましょう」などと、貴族の末裔のような会話が続いています。貴族。それは制度であった。今では概念。もみじの艶に宿る感傷的な思念。ポリコレ、ナショナリズム、オリエンタリズム、キャピタリズム。すべての主義主張や運動が、紅葉の色づきによって溶けて消えてゆきます。日本人は忘れやすく移ろいやすい民族である、とよく言われますが、そら、四季がくるくると目まぐるしく移り変わるのだから、精神もまた狂狂と移り変わるのは文字通り「自然な」ことなのかもしれません。それが星のさだめ。あなたも星に還りなさいと耳元で未来の藤原不比等が囁きます。嗚呼。うぐう。

 

岩と植物の根・枝のコラボが面白い。原始機械生物の趣があります。このあたりの岩石はメタリックな色をしていて、いかにも何か含んでいそうに感じる。星はやはり岩石に限ります。ガス惑星は認めん。

 

大きな豆のような糞を発見。ニホンジカですか。下りルートも含めて随所にあった。活発に生息しているようである。そういえばツキノワグマも出るらしいが・・・ 元気があるうちなら何とかなるのだろうか。クマよりむしろイノシシの方が怖い。突進によるダブル牙突で内股を切り裂かれると大量出血でやばいと聞きます。

 

野生動物の糞など痕跡に気付くと、こうした落ち葉のはだけた地表が「偶然」には思えず、何かが来たりのたうったりした跡ではと、動物の営みに結び付けて考えてしまう。やつらも食い物を探しているに違いない。

 

9:03、「小森頭」。地図上にはスポットなし。特に何もなく単なる通過点。

 

 

最後尾を歩いていると、脱藩者の山越えみたいでシュールであります。「カムイ伝」を髣髴としたり、難民など色々連想し、「境界を越える者」のシリアスな状況がオーバーラップします。さっきまで貴族めいた気分で紅葉愛でてたらあっという間に脱藩者。変な気分だ。

この山はどうもいつもの「登山」と違って、コースの緩やかさが不明瞭さに繋がり、レジャーやスポーツとしての「登山」と「山を越える」行為との境界をも曖昧にしてしまうがゆえに、色々ととりとめのない着想がぼこぼこ浮かんでくる。実際、頭の中が非常に変で、全く関係のない音楽が流れたり、ゲームやアニメ、漫画の場面が何度もリプレイされたり、絵柄と設定が混ざり合った状態で想起されて、非常に変だった。(例:尾田栄一郎の絵柄で『バキ』が動くなど)

 

これはTwitterアイコン的な秀逸な葉っぱであり、もはやアイコンである。押すぞ。

 

コースが平坦で凡庸な分、倒木が良い造形的表情を醸しておりまして、前衛みがあり、紅葉よりも高揚感があります。紅葉やキノコにキャッキャする女子らを尻目に、この幾何学と有機の混在する世界へと拉致られてゆくのでありました。完。

 

枯れ木が青く銀色に輝くのは、ミスリル銀の産地だからではなく、緑青腐菌(リョクショウグサレキン)が発生しているため。目には姿が見えないがキノコの一種だという。

 

こうして安全でヌルゲーめいた山行なのだが、しかし特徴的なトラップもあった。それは恐ろしいものでした。なんと目を狙ってきます。

 

これをご覧いただきたい。

 

女子がただ山を歩いているように見えるが、これは「ちょうど目の位置にぶち当たる樹の枝を手で押しのけながら歩いている」様子である。ちょうど目の位置に枝がありすぎ問題。このような「目だ!目を狙え!」事案がとにかく至る所で発生し、めちゃくちゃ危ない。危なかった。

私も何度ばちばち顔を枝で突かれてしばかれたか分からない。日頃の行いが良かったのか、偶然に瞬きしていたり、目線を足元にやっていたので眼球への直撃を免れた瞬間が何度かあって、冗談抜きで危なかった。前を歩く人との距離が十分に空いていたので、枝:私の責任は100:ゼロである。枝の配置が凶悪すぎるのだ。こんなにしつこく目を狙われたのは初めてだ。瞼に擦り傷がついていた。白目に枝が刺さらなくてよかったすよ。

 

そんな厳しい?山行に、唐突にご褒美めいたものが現れる。秋の風物詩・ススキである。

 

9:46、なぜか唐突に現れるススキ群生ポイント。楽園じゃあ。

これには「フォトジェニック死すべし!」と夜な夜な焼き討ち運動を行う私も「黄金色だあ~😋 王蟲の触手だあ~😋」と大喜びです。理解のある彼くんも勇猛果敢な姫様もいません。現実とススキ、そして琵琶湖だけがあります。十分だ。

 

すっかり晴れてきており、もう雨は降らんやろと理性では分かっていますが、手間をおしんでレインウェア上下を脱いでいません。下がズボン重ね着状態なので暑くて汗だくなのだが、登山靴を解除するのが面倒くさすぎてそのままで撮影。

ススキの向こうに見える青く灰色の部分は琵琶湖です。空と対等な規模、大きすぎて訳が分かりません。琵琶湖は存在それ自体が神話なのだ、と誰かが言っていました、私だったかな、まあそれもむべなるかなです。

 

遠く離れた向こうの山の斜面より、ブワーーンゥアンゥアンゥアーーンワワーーンと、カーブを鋭く攻める走り屋の走行音のような爆音がめちゃめちゃに響き渡っています。凄まじい回数あるいは人数で峠を攻めているようなこの音、どうやら風が谷間を吹き抜ける時の風切り音が変形したもののようですが、もうみんな気持ちはイニシャルDです。見えないゴーストレーサーを思い描いていました。ゥワァアアアンワアアアアアンウワアアアーーーン。

 

9:57、「連状口」。これが2回目の「鳥越林道」(車道)横断ポイントです。

ここから山頂まで1時間半ほど。もし車で乗り付ければ、これまでの3時間の登りをカットして、往復3時間でお手軽に頂上ハンティングできてしまうという、なんかすごいショートカットが可能な山です。登山より撮影が目当ての人には好条件すぎる。

 

だが逆を言うとまだあと1時間半も登らないといけないのだ。長い。なんかもう長い。これ下山したらやっぱり夕方回ってるのでは。。。食べても減らない丼のような山であることを実感しました。ぐえ。

 

( ´ - ` ) 後編へつづく。