nekoSLASH_記録編(日常・登山)

『nekoSLASH』分家。日常、登山、廃墟、珍スポットの記録集。

【旅】2024.8/25_飛騨金山「筋骨めぐり」ガイドツアー(後編)

「筋骨めぐり」ガイドツアー後編。川を挟んで立ち並ぶ住居群を抜けて、飛騨金山「ハウルの動く城」に迫る。

 

想像以上に面白かったので、後からガイドツアーの説明を振り返るなどして書き起こしていたら想像以上に時間がかかっており、やばい。8月が終わってもうたぞおい😶

 

◆「筋骨めぐり」前編

hyperneko-daily.hatenablog.jp

 

前回のクライマックス:大正時代の銭湯を観終わって、メイン通りに出てくると、古道具の店があった。気が緩んでいるので要らん桶とかタライとか買いそうでやばい。

 

7.古いもん屋1号

ガイドさんら数名で運営している古道具屋で、町に2店あり、こちらは比較的大きな生活用具を扱っている。桶、壺、鞄、籠、おひつ、時計、etc…。価値は分からないが雰囲気的に楽しい。良いものはもう売れたんですって。

紙・書籍類は「古文書 8冊 3,000円」があったぐらい。内容不明。古書が多かったらやばかったと思う。フー。

 

奥に「寅さんのカバン」があります。人生の素早さが上がるかも。

 

メイン通り、見る場所によって時代感がけっこう違うので混乱する。ここはすごく古い時代に見える。黒くて木製だと江戸っぽいのな。あとカーブしている町というのがやはり時代を感じさせるのかもしれない。味わい深い。

 

 

8.川沿いの水場、川の上を跨ぐ家

車道の裏手、家屋に囲まれた細い川沿いを走る筋骨を行きます。この一帯は今までの筋骨よりも建物が高い密度で迫ってきている中を歩いていくので、迫力がある。

 

川の上に堂々と家が。

家と家の間に家が。

地味に凄い。『映像研には手を出すな』で普通に出てきそうな光景である。これは現行法では違法になってしまう。ここからは河川と家屋を巡る違法ワールド。なお筋骨は中央物件の左下のくぼみの道です。奥へと続いておる。

 

その前に水場を観ましょうね。町に3か所の公共水場があり、地下水を活用した洗い場となっている。

各家庭に水道が来るまでは、ここで洗い物をしていた。

洗って、左下にある仕切り板を上げると、溜まった水がすぐそばの川に排出される。天然の洗い場である。

 

一見、右上の隙間から川のようにして水が流れてくるように見えるが、水が減った分だけ、水場の底に敷き詰められた岩の隙間から地下水が湧き上がってくる仕組みだ。山から町に向かって大量の地下水が流れているのですぐに水が補充される。水が豊富すぎてすごい。無尽蔵だ。一瞬、産油国の王族の気分になる。なったよ。

 

川さん。藻のせいでドブ川っぽいが、地下水が主ならこれって見た目より水質は綺麗なのかも?

 

そして建築物 × 建築物の交錯空間がはじまる。慣れ親しんだ日本の家屋のせめぎ合いによる異世界だ。この川沿いは再度来て再撮影したいぐらい良い。コナミ社がホラーゲームの取材のために来たんですって。さすが大企業はぬかりねえな。デスクリムゾンチームは行かなくて良いのか?

曇り気味の天気のせいもあるが、生活色が強いので、メカメカしてもいないし、レトロレトロでもない。住人らの、あの手この手で配線を繋ぎ合わせて少しでも便利にしようという野良カスタマイズの逞しさを感じる。

路地やレトロスポットを実況歩きするYouTuberの動画と大きく異なるのが、そうした生活の力、獰猛なまでの結果論的アナーキズムの陰である。人口に膾炙する動画というのはクリアで明るく、目に快適である。

だがここに実際にあるのは湿度や混線、無手勝流の生活感である。実際には、鑑賞者が手出しできないものに満ちていて、綺麗に画面に収まるものではない。

 

一つの家庭の物件で、向かって右側が車道(商店街)に面しているので店をやり、川と筋骨から左側に生活スペースを擁しているので、川を跨いで両者を接続する必要がある。川の上を橋だの建物だの配管だのが行き交う。

家屋と川との間に生じた闇の中に、いかにも夜をイメージしたデザインが浮かんでいる。

蝙蝠のマークは夜の女性の商売の印だと教えてもらった。しかも無許可での商売をしていたため、わりとはっきり蝙蝠と判るマークになっていたようだ。

無許可の店なら逆にはっきり判ったらよくないんじゃね?と思ったのだが、後に町中のメイン通りに面した物件を紹介された時には、そこが合法的な店ゆえに、言われなければ蝙蝠とは分からないフォルム=隠されたサインとなっていた。明るみに出ると蝙蝠は姿を隠し、昼でも暗いところでは蝙蝠が姿をくっきりと現す。対照的だ。

 

しかし無許可と言いながらも黙認されていたのか、どういう形態のサービスとして客を取っていたのか、周囲の状況はどうだったのか… 民家が立ち並ぶ中で一店だけがそういう商売をしていたとも思えないので、この川沿いが隠れたゲリラ歓楽街、風俗街となっていたのか、色々と想像させられる。

 

第2の水場。

入口にあった水場と仕組みは同じ、減った分だけ石畳の隙間から地下水が上がってくる。空気も沢山含んでいるので、水と共に水泡が上がってくるのでよくわかる。

 

周囲の物件の細部が面白くてですね。複数回行かないと味わいきれない。

最後の写真でドアや壁に横線が走っているが、2018年に起きた洪水で水がここまで来た痕だという。川に流木が引っ掛かって水が溢れたと。それがこの一帯にとどめを刺して無人化させた最大の要因。

 

 

9.通称・金山の「ハウルの動く城」

ハウル。後付けではあるがそう呼ばれているのがこの物件だ。確かに色とせり出し方とボリュームがあって、ひときわ大きな存在感を放っている。

正面から引いて写真にすると普通の家屋になってしまった。ちがうんや。もっとこう異形な存在感があるんや。そもそもこの下に川が流れてますからね? 川の上にせりだし。違法すぎて痛快。川との関係性、横からの位置関係でもっと構図を攻めていくと異形の良さが伝わるかもしれない。(皆さんはどう攻めますか?)

 

この物件、通称ハウルが筋骨の町を象徴する存在となっていて、様々な絵師が題材にしていることが紹介される。

 

愛されていることがわかった。

両面宿儺もそうだが、民の暮らしと共にありつつ、お上や法令には反抗し、なおかつ力に満ちて異形の姿を誇るものは、畏れと共に敬愛されるのだろう。この物件も、素人目にも明らかに法的にイカンことになっており、何か起きたらたいへんやぞとしか思えないが、なぜか魅力的なのだ。だから私の中ではこの物件はハウルというより宿儺である。

魅了されている我々。気持ちが止められない。なお畑でガイドさんが作っていたミニトマトは甘くて美味しかったです。

 

現在この辺りは無人。おじいさんが1名住んでいたが、洪水の時に出ていった。

重機が入れないため、災害で壊れても撤去は人力しかない。先日1軒を撤去した際には住民らが労働を無償提供したという。全ては支え合い。町を生かすために皆で一体となって動くのが当たり前の世界である。都会からの移住組の田舎暮らしがハードル高すぎることを実感した。町や集落の概念と事情が全く違うのだ。

 

上に建っているやつもなかなか存在感が凄い。かっこいいぞ。ちょっと崖からはみ出ている気がする。セットバックという概念は…ないのだ。

 

 

10.筋骨ディープエリア続き~川の上の居住空間

川沿いの続きを進みます。味わいMAXのディープエリアなのでじっくり撮影を攻めたいが、いつガイド説明が始まるか分からないのでほぼ歩きながら記録用の仮押さえで撮っている。ああん忙しい。(※実際忙しい)

下水やガスなど生活インフラが筋骨の側にあるので、車道側の家屋から川を跨いで管を這わせ、色々と接続させている。暮らしのエネルギーの流れが剥き出しになり可視化されている。やたらめったら管や線が強調されるサイバーパンク、その前身は戦後のバラックや脱法建築ということになろうか。管を!もっと管を!

 

しかし法律と行政の力は今や暮らしの上位におり、筋骨から通用口に渡しかけていた橋なども壊れたら復元は不可です。昔から使っていたものが例外的に見逃されているだけの状態。なので橋が撤去された跡が点々と見えている。

 

つげ義春の世界だなこれは。しかし全て黒い重金属と電線で構成されていたらサイバーパンク。レトロと近未来は表裏一体の世界なのか。しかし床を支える木材に下水だか何だかのパイプが食い込んでるのは暴力的で実に良い。支柱も細いけどこれでいけてるんだな。物理がどうなってるのか謎。

 

洞穴のような通用口。「占有目的 物置」という堂々とした許可済証。階段の上にある木の蓋で住居側に入る通用口となっている。忍者の里なのですかここは。無駄がなくて実に良いです。これを集合住宅にすると九龍城になるのか。人間は集めて住まわせるとすぐ九龍化する。(良き

 

下水を筋骨側に持ってくるシステム。台風で折れたらどうするんだろう。その奥の不自然な真四角のコンクリートは、かつての橋が落ちたか何かして撤去した跡。昔はこの川の上がもっと橋や家屋だらけだったはず。カオスだ。

 

あの長方形の木の部分もあやしい。通用口だとしたら、川に通路も伸びていたのではないか。

これは比較的建材が新しいし、住んでいる感じがする。窓も空いている。車道側は普通に家や店舗が並んでいるんだから、当然といえば当然か。物件の生き死にが混在していて時代を見失うのが面白い。何より、ガイドツアーのおかげで、こうして人様の生活圏で写真撮ってても怒られないのがノーストレスで有難い。理想的であります。

 

棲息する小動物の調査もしてみたい。カワゲラ、カゲロウ、ヤゴがいることを期待。

 

折り畳み次元はエロい。中どうなってんの。家屋内部の調査もしたいな。

 

河川占用許可期間が昭和37年~昭和42年で時が止まっており、バグ世界であることがわかった。レトロとかエモとかいう次元ではなく、違法建築とは時を超える禁術なのだ。楽しすぎる。床の部分の材木が剥き出しなのもやばい。

 

他の地域でこの光景が広がっていたら「違法バラック集落」「戦後バラック街の闇」などとYouTuberがこぞってサムネ打ちそうなものだが、ここでは「筋骨」という違った(正当な)歴史的文脈を語ることによって、安易なバズのタグ付フィールドへ回収されることから切り離されている。独自性、独立性をいかに主張していくかが重要だということが分かる。

 

しかし面白さの本質は、見慣れないものが視界に溢れ、既存の秩序を超えたところで生態系、生活圏を構成していることにある。人は人の集まるところが好きだし、均質化から逃れた特異なものが好きだ。あったかもしれない進化の一つの姿を見る。

屋外にコンセント剥き出しだったりしてなかなかあれだ。破れた波板とかも、どこまで生きている物件でどこからが撤去待ちなのか分からなくていいですね。いいのか。こまけえことはいいんだよ。

 

 

11.蝙蝠、切り絵ギャラリー

川沿いから地上に上がってくると、ブルーシートで囲われた空地。そうかここも何かあって取り壊しになったのだ。減っていく一方であるのは間違いない。

 

しばらく歩いてクイズ。また蝙蝠の物件がありますよ。

えっどこ?

 

この玄関の歯みたいなマークが蝙蝠。言われればそうかなというフォルムだが、言われないと分からない。許可を得ている店なので表に面したところにあり、川沿いで見たようなダークな蝙蝠ではない。

物件の形からすると、2階の座敷でなんかこう女性と寝てあれする的な店か。わからん。中の撮影もさせてほしいな。

 

続いて案内されたのがPioneer、だった「切り絵ギャラリー」。

町の裏の筋骨ばかり歩いているので、表側の店の位置関係が全然わからん笑

 

中は切り絵作家・辻井邦雄氏の作品が掲げられている。どれも筋骨の町をモチーフにしている。辻井氏もまた筋骨ガイドの一人。

新聞記事によると、元はここでレコード屋を約45年営んでいたが、音楽コンテンツはデータ配信が主流になったため2014年頃に店を閉めたと。しばらくは空き店舗になっていたが、筋骨の切り絵を飾ると人が見に来るようになったので、今ではギャラリーに。

 

 

12.古いもん屋2号店

町の隙間★筋骨だよ( ◜◡゜)っ

これ渋谷とか新宿でも採用してほしい。都市は人間にとって把握不能に発展していく有機体であるべきなんですよ。役所とデベロッパーを発狂させろ。

筋骨めぐりによって脱中心化された身体的地図の思想を形成していくわけです。だいの大人がそんなこと言ってて良いのか。いいんだ選挙には行ってるし納税もしてるからいいんだ(言い訳)。帰属先のない、変容した地図。計画図によって定められた機能から逆算して作られた町ではなく。ドゥルーズを読むべきですか。

 

はい「大岩洋服店」改め「古いもん2号店」。

こちらは小さな生活用品、茶碗や皿、調度品が主。古民家の宿や飲食店によく置いてるやつ。実用しようとするとややハードルが高い。忍び込んだ廃墟ホテルでよく見たからだろうか。あかんて。

 

本はバカスカ買うくせにそれ以外のブツは極端に慎重になる私。この日も見送りでした。手斧ぐらい枕元に置いておいてもいいかもしれない。

 

元・床屋だと思うが、PLEASEとはいったい。そして平和の象徴のようなひまわりの絵。謎が多い。アーティスト・イン・レジデンス物件なのだろうか。いっそそういう町になってほしい。

 

 

13.「金山巨石群リサーチセンター&ギャラリー」

ありがたいことに立ち寄ってもらえた。

今回の旅で時間が無くて見送った金山巨石群、せめてもの情報収集にと、筋骨ガイドツアー前の時間つぶしに、一度はリサーチ&ギャラリーに寄ろうとしていたのだが、普通の民家だし、扉が閉まっていたし、ちょっと謎すぎてこわくてスルーしたのだった。

別にやっていなかったわけでも怪しい施設なわけでもなく、扉を開ければ金山巨石群の資料館スペースになっていて、壁には前半で紹介したような巨石=縄文人による太陽と季節の測定装置であることの説明が事細かに掲示されている。文字数と写真がすごい。

巨石というと太古・神話的ロマンやスピリチュアルを絡めたビジュアル勝負みたいなところがあるが、ここは全く違って「ただの巨石ではない」「天体と時間の観測装置である」「縄文の頃から太陽暦をやってました」という、人類史上どれだけ大きな意義があるかをめっちゃ説明している。理科の資料集の特化版である。

こういうプレゼン資料が壁という壁に掲げられていて、読んでもよく分からないので(※筆者は文系のため空間とか時間を理解するのが苦手です)、早く現地でガイドツアーすることが求められている。はい。

 

なお室内の写真がないのは24㎜以下の広角レンズがないからである。はい。

 

 

14.城造り建築「清水楼」、日本画内装の宿「福寿美」

筋骨筋骨😶 隙間を愛せ。

3階建ての元・料理旅館「清水楼」

うなぎ料理の店となっていたが最近閉店した。

 

この物件が特徴的なのは、元は1階建てだったものが徐々に積み増しされて3階に達したこと。そのため通し柱:土台から軒まで1本で通した柱がなく、釘も使っていないという組み立て物件である。どうやって接合したり強度を得ているのか図解して教えてほしい。

 

こんないい物件が廃屋になっているのは残念すぎる。なんとかこう、なんちゃらビエンナーレとか芸術祭をぜひやってもろて、代表的な物件を作品の展示会場に充てつつ、内部を公開してもらえたら泣いてよろこびます。だめすか。

 

もう1軒、向かいの「福寿美」という旅館も紹介される。

見た目は普通の旅館のようだが。

 

内装が凝りに凝りまくっている。濃いめ濃いめに強調された和の美装、大人の夜のお店テイストに寄っていきそうなところを手前で止めてる感じで、和の娯楽感が良い。都内とか都市部でやったらさすがにアレだがこうも何もない(失礼!)地方でこの非日常感は正しい。

内装には日本画が用いられるなど謎の凝りよう。

玄関先のみ入らせてもらえた。チラ見せが一番体に悪いんすよ?笑 はまるんやでこれ。

随分と内装が綺麗に残されていて、なんでこんなに状態が良いのかと思ったら、閉店したのはつい数年前だという。

少し調べてみたら、先述の2018年の豪雨による洪水で床上浸水し、交換したばかりの何千万円もするボイラーがやられ、再建を断念したという。悲しすぎる。

blog.livedoor.jp

 

要はメインとなる車道2本の商店街が寂れているのも、過疎化というより2018年の洪水が大ダメージを与え、店を廃業に追い込んだり活力を奪ってしまったということではないか。

やはりこれはなんとかビエンナーレとか、芸術祭をですね、やってもろて、こうした飛騨金山の代表的建築やスポットを解禁していただいて、こう(残念でならない) 誰かキュレーターを。こう(私にはむり

 

 

15.最大の水場、公衆便所

筋骨筋骨っ ( ´ - ` )ノ

バリアフリー筋骨。現代志向だ。

 

「清水楼」の裏にて3か所目の水場に到着。この水場が最大かつ保健所の検査をパスしており、湧き出し口のところは柄杓で掬って飲むことができる。

奥から1号池=飲料用、2号池=冷やし物、3号池=食器や野菜洗い用、と区分けされている。

確かにさっきからスイカとか夏野菜冷やしたらいいのになあって思ってたんすよ。水の清浄度が関係しているのかな。

 

使われていないのが信じられないほど、現役としか思えない形で残されている。みんな実はちょくちょく使いにきてたりする?笑

 

ここからの筋骨さんも生活感があり、空が開けて緑が多いがディープであることに変わりはなく、よき。

カオスだ(※誉め言葉です)。柵の向こうに続いているのは筋骨なのかマジ人ん家なのか判断に悩むところ。いや人ん家なんだけども。誘ってますよねあの階段は。こっち見とる。

 

むしろこれが筋骨=公道であることの方がおかしい。現実なのだから仕方がない、これが公道です。わあい。小学生時代からこんなところで育ったら公私とか「道」の概念がバグりそう(幸せ)。バグってええんやで( ◜◡゜)っ

 

表通りに出ていた「公衆便所」がここか。だいぶ迷路みたいなところにあるけど。表から普通に辿り着けるのか心配。

 

路上のホースを撮り溜めた写真集:熊谷聖司『あなた』を読んだ後だと、誘惑が実に多くて参る(喜び)。何もかもが存在感を訴えかけてくるのだ(喜び)。暮らしのブリコラージュと喜び。

 

こっちの川はワイルドだ。初夏にホタルでも飛んでゐそうな光景である。これが飛騨川からの水を町へ導いていて、ハウルの方に伸びている。味わい深い。

 

 

16.馬瀬川の境橋、パワースポットのけやき、最恐の階段

山の中腹より少し上あたり、何かお堂というか建物が口を開けている。見えますかねあの黒いやつです。説明してくれたけれど何だったのか忘れてしまった。

 

以降は打って変わって空の開けた川沿いを行きます。馬瀬川(まぜがわ)・飛騨川を見ながらのガイド。

手前が馬瀬川、奥が飛騨川。ガイドツアー冒頭から川の歴史が度々語られてきたが、全てはこの川のことだ。とはいえ昔のものとは規模があまりに違うので、目の前の大人しい流れからは、やれ山を削りきって分断しただの、材木が1万本単位で運搬のために流されていただの、遠い神話のように聞こえる。

 

ここが鮎の名産地となっていて、

いにしえの『釣りキチ三平』でも登場する。釣り漫画に疎いので凄いのか凄くないのか分からないが凄い。時代的に言えば『美味しんぼ』で取り上げられた飲食店と同じぐらい凄いということになろうか。ゲフッゲフンゲホッ。

 

鮎がどこにいるのか問答の答えが「川の中できらきら光っているのは全部鮎」とすごいことを言われたのだが、わりと川の中が全部テラテラ光っているように見えたの、本当にあれ全部そうなんすか( ゚= ゚ ) 友釣りどころじゃないぞ 網だ、網を持ってこい  全部鮎とかトータルアユやばい、本当なんすかうわあ、眼鏡持ってくるの忘れたのが悔やまれる。

 

あとは対岸の桜の木や、花火大会の紹介などがなされたが、どこからが鮎でどれが水流や水面の揺らぎなのか区別がつかないことにテンパっていた。AYUを求めて目が泳ぎます。AYUは全てに宿り、appearsする。

 

ついでにTwitterで話題になったとかいう「最恐の階段」も登場。なになに最終回が近いんかい。

階段自体は斜めに下っていて、足がもつれてよろけても壁側に体が行くようになっている。重力には逆らえないことを逆手にとっている。むしろ階段に足を踏み出す前の踊り場の部分が柵もなく最高度に位置していて怖い。

 

なお「最恐階段」でバズったのが工場夜景などで有名な写真家・小林哲朗氏なのがまた面白い。2023年4月の投稿というからつい最近の話である。ガイド氏の情報収集力がよくわかる。私なんて写真やっていながら何も知らなかったですからね。リベラルとツイフェミが暴れるのを眺めて酒を飲んでいた。わああ。

www.buzzfeed.com

 

見えない鮎を数えていたら反戦に目覚めそうになったのでとっとと橋を渡りますよ。「境橋」(さかいばし)を渡って2本の川の中腹に立つ。ここも中州とかいうレベルではなく古くからの木々が生い茂るしっかりとした岩山のようになっている。

正面に立派な森とお堂がある。見えているのは住吉権現・子守地蔵尊で、道路のマンホールは伊能忠敬が測量を開始した「飛騨測量水準点」として記録されている。更に、写真では見切れているが、左端の赤い柵のあたりにはまた別の「両面宿儺の像」が立っているとGoogle Mapが教えてくれた。子守と測量と暴力ですよ忙しいな。最終回が近いのか色んなのが次々に登場して忙しい。

 

伊能忠敬。大判カメラを担いで記録撮影をした偉人ではありません。

 

地蔵尊のすぐ隣には「運気を上げる欅」と、思いっきりそのまんまの名が付けられたケヤキさんが佇んでいる。自然の多い地方あるあるLS(ローカルスピリチュアル)。

根本のあたりから手をかざして、木に触れないようギリギリのところに掌を置いて、手でバーコードを読み取るように上へとスライドさせていくと、コブになっているあたりでビリビリというかピリピリと「来る」らしい。

 

ほう😶

 

任せておk、最近の私は心身が不条理に不調で、ものすごくバイオリズムが悪くて、スピってきてるのだ。樹のエナジーを感じ取るなど朝飯舞でマイクロソフト、

 

だめでした。

信心が足らんのか、血行が濁っているせいか。うちのパーティーは4人全員だめ。思うにコブのあたりで気流が出来てて、それが掌の感覚を狂わせるのを「来た」と感じるっぽいのだが、スピレベルが低すぎてだめでした。筋骨サイバーパンクでアドレナリン出ているようではだめなのだ。

 

 

はい、川から町へ戻るよ。(筋骨)

 

また隠し通路みたいなのを連発。忍者の里ですやんこれ。飛騨ニンジャはキンコツを疾風の如く駆け抜けてハウルの砦に飛び込んだ。イヤーッ。

細さ、マイナーさ、私的さ、目立たなさ、分かりにくさ、不法侵入性、あらゆる点で高得点を叩き出す、ハイレベルな筋骨である。どの筋骨も個性がある。すごい。多様性。似て非なる、というかどれも違っている。途中で侵入者を知らせる警報が鳴っていた。ピョロロロロロロ。これ本当に歩いてよかったんすか(´・_・`) いいのだ。いいのが、筋骨なのだ。

 

しかし徐々に疲れてきた。ガイドから語られるrekishiも少なくなってきた。そう、ツアーの終わりが近いのだ。飛騨金山との別れの時間がやってくる。

 

 

造り酒屋「奥飛騨酒造資料館」~ゴールへ

終盤のとどめとして車道の向こうに現れたのは、見るからに古い歴史を誇る酒屋。やばい!あれは酒屋だ!未知の惑星を見つけた飛行士のように私はぱくぱくしながら脳の中で叫ぶ。あれは造り酒屋だ!銘柄を掲げている! 私は地方でちゃんとした酒屋が現れると一気にあらゆる査定が甘くなり、ろくに飲めもしないのに720mlを2~3本買うというルーティンがあることで知られている。なお先日の馬籠峠にてそのルーティンを果たしたのでここでは特に買うつもりはなく(※実は二日酔いも催している)(ゲフッ)

 

この造り酒屋は創業1720年と、300年前から酒を造っているので、無条件降伏です。あ~何を買って帰ろうかな~。査定が甘すぎる。蓄財するつもりがない。へへ

www.okuhida.co.jp

 

「奥飛騨」と「初緑」が有名と。

店内の写真があまり無いのだが、それは何を買うか買わないか買うかどれ買うか買うんですか買いますよと瞬殺の誘惑と策謀のせめぎあいで身動きが取れなかったからだ。

しかし「米で作った国産ウォッカ」なるものが売られており、味の想像がつかず、わからん、わからんとうなり始め、「わからんものは買ってみるしかない」などと独り言を言う始末、二日酔いで後部座席で死んでいた人間が何をいうか、と周囲が訝るも、目にもとまらぬ速で即買いをぶちかましたのであった。だって分からんものは飲まんとわからんやないか。わかりにいくぞ。

ややクセがある、不思議なウォッカ。透明だが重みがある。そもそも度数が55度ありノド越しとか求めたら死ぬので(※家で飲んでいます)(※現地では飲んでいません)

 

( ◜◡゜)っ にゃあ。

「奥飛騨酒造資料館」という名を冠しているのも、ケースに収められた歴史ある品物の数々ゆえだろう。もうみんな先へ行こうとしているので全然何も見られていない。ああんウォッカ買ったらもう時間がない。奥飛騨、奥飛騨。

 

そして筋骨は店を貫いて酒蔵・工場のほうを突っ切っていく!なんだと!一体どういうことだ! 筋骨ではなくガイドツアーならではの見学ルートだからと思うが大胆な貫きルートである。

煮崩れたKYOTOGRAPHIE会場みたいな蔵も出てきて雰囲気は最高。なあ早くここでアートイベントをやってくれよ。そうして眠った建築という建築すべて眠ったまま交わろうじゃありませんか。資本主義を手放して存在を忘れて半分眠りながら残った半分が夢見るアートを、こう。

 

隣は畑で隣は工場、工場ではたぶん日本酒が生まれたり眠ったりしています。眠りが満ちて季節が回るんだ。眠らなければ季節は来ない。日が傾いてゆく。ああっ。筋骨は工場の通路のようにして続く。私も瓶に詰められますか/ませんか。ああっVinVin。

奥飛騨酒造さんの工場や倉庫がずっと続いていてインダストリアル、寂れたような生まれた時からこの姿のようなあれで、ささくれ立ったような剥き出しの壁、その真下を通る直線はやはり筋骨なのだった。絡みつく筋骨。

 

そしていよいよ最終コーナー。農協の建物の裏、広い駐車場に出たが、そのど真ん中を黄色い線が2本走っている。まさかのこれが筋骨の最終形態、完全フラット化した概念・制度としての筋骨である。

とうとう筋骨はシステムに…。そしてOSに搭載され、いずれ私達のWebも筋骨化し、メタバース空間の端に網羅的な細い道が生まれるのだ。Meta社はニッポンのキンコツトライブにメタスペースをゆだねるべきです、そして合法的かつ公的なカオスを呼び込んで

 あっ  ガイドありがとうございました。

 

 

こうして飛騨金山「筋骨めぐり」ガイドツアーは終了した。

もろに2時間たっぷり案内してもらい、歴史と地理に触れた。これで一人500円は元が取れすぎてどうかしていてやばい。感謝しかない。次は撮影しにきたいインダストリアル😶

 

 

( ´ - ` )完。