nekoSLASH_記録編(日常・登山)

『nekoSLASH』分家。日常、登山、廃墟、珍スポットの記録集。

【登山】2025.8/23-24_塩見岳(南アルプス)②塩見小屋~塩見山・山頂ピストン

南アルプス・塩見岳。山頂にいくよ(死んだ目

帰路どうすんのこれ。

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前編で塩見小屋まで来ました。

登頂します。なおピークをきわめたその後は三伏峠小屋まで戻らないといけない。塩見小屋が満員で予約がとれなかったためです。山頂の往復2時間+三伏まで3~4時間、うわあ。5~6時間もかかる。

なお今回の山行がいかにひどいかは総括編をご覧いただきたい。しんど。

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◆12:30~12:45 塩見小屋

小屋前で25分もまったりしていた。昼飯というには控えめな、小さなパンを齧る程度。高速SAでクソデカ唐揚げ?肉のはみ出まくった冗談みたいなおにぎりを買っていたのだが、食欲がなくて見るのもキツかった。食欲がない。

 

ただ、いつものようにコッヘル煮炊きで小一時間まったり昼食をとったりはしていないので、コンパクトにさっさと出発できたという見方もできる。コッヘルをやめると時間が浮く。ただ山行が味気なくなる。コッヘルのアンビバレンツといいます(造語)。

 

小屋に色々売ってて、コーヒー1杯200円らしい。安いな、いいやん、しかし、飲む気が起きなかった。今思うとだいぶやばいのだが判断力も鈍っていて「あ~~”、飲みたくないのは、おかしいな、やばいかも、、」と薄っすら思いながら、特に打ち手もない。地図を眺めて残りタスクを数え上げ、そして自分の気力体力でやりきる自信がなくて怯んでいる。

 

でどう考えても三伏峠小屋に戻るのにあと5時間以上はかかり、18時を過ぎる。急にスピードが上がるような奇跡など起きない。まずいなと思い、小屋にTelする。あの必ず辿り着くんですが18時を超えそうでして。「夕食の提供が17時で、それ以降になると…」「最近は労働基準監督署からきびしく言われてるんで、時間を超えてバイトの子を働かせられないんですよ」「う~~ん」「食べてもらえそうなものを見繕って、外の東屋のほうに置かせてもらってそちらで食べていただくということで大丈夫ですか?」はい、はい、もう、ありがとうございます、ご迷惑おかけしてすいません、「これから山頂行かれるんですよね、また本谷山あたりで、19時過ぎそうでしたら連絡いただければ、我々も安心しますんで」はい、すいません、はい。

 

登山中の大きな気掛かりが3点あった。一つ、自分の不安定な体調と体力。二つ、同行者の体力。三つ、山小屋の営業時間内にインできるのか否か。余計なことを考えて不安になるのは職業病かもしれない(普段は創造や挑戦とは程遠いメンタリティと体質と組織カルチャーに浸りきって日々職務をやっております)。

この期に及んでまだ登頂すべきかどうか悩んでいる。

 

 

◆12:45 塩見小屋 ⇒いくつか紛らわしいやつ ⇒13:32真のピーク

ハイマツを抜けて、目の前に大きなピークが現れた。こいつが山頂か?

あー大きいなちくしょう。

だらだら登りを頑張ってこなしていけば、なんとかなるように思われた。よくよく見れば普通の山道なので、黙って歩けばいいのだが、この時異様にナーバスになっており、もはや登るべきでない決定的な理由を探していた。しんどいのもあるが、この山行全体に責任をとれない精神状態になっていた。なんかわからんけどそうなった。

 

山行の全体像を見失っていた。意味というか、目的というか。

それは初心者を連れて無事に下山することが目的化したためでもあるし、何よりも自分自身が「山」や「登山」の魔力から醒めてしまったためでもある。全てが同じことの繰り返し、山というクリシェだという醒めと脱力に襲われ始めたのだ。

 

脳が動いていないからなのかもしれない。鬱の何歩か手前の、全ての意味やいろどりが失効するような実感に、波に攫われるようにして襲われた。こんな時に… 歩くしかない。妻氏が「私は見てるだけで十分だけどな」と呟いた。二人して登る体力がもうないかもしれない、と予防線を張り、師匠が「ここまで来て頂上行かへんというのはありえないだろう」といった発破をマイルドにかけ、退路を断つ。透明なぬるい攻防戦が数秒繰り広げられ、決し、私達はのろのろと歩き出した。

景色は壮大で、見下ろせば谷はどこまでも続いていて、この世界の中で人間は足元の石ころぐらいのサイズ感でしかない。このスケールのバグった世界が魅力で山をやっていたはずだが、この時、何も感じなかった。まじでコロナにでも罹っていたのか?不気味だった。

これまでになくちゃんとした登りが続くようになってきた。息が切れる。間違いなく素晴らしい道だ、アルプスに来て岩がなければ詐欺だ。岩のない山は異性のいない人生のようなもので、あってはならないことだが、残りタスクと体力を数えるだけの、経理担当のジジイみたいになってしまっていた。

 

この砦みたいなやつをどう登らされるのか不安でならない。

でかいぞ。砦がでかい。

地図ではルートを細かく書いていないが、この「天狗岩」を手前から右へ巻いていくのだった。直接乗り越えるのは絶望的にしんどい。私しんじゃうかもしれないけどいいんですか!(メンヘラ

巻いていく。えっ じゃあまだ頂上は先じゃないすか。

遠い、、、なんやねんなもう、、頂上どこ・・・(メンヘラ

なんか鎖が出てきたんですけど。

まあアルプスでの鎖は交際において手をつなぐのと同じぐらい必須不可欠なので歓迎しますが、まあ山なんて性愛の反転したものだからそうなんですよ 呼吸がつらい、ドデカミンを僅かずつ飲んで体力を、これ体力回復してるのか?謎(´・_・`)

 

鎖は使わないけど下り時に補助に使ったらいいし、ルートが明瞭になる効果がある。岩場はどこでも行けそうに見えてしまうのがあぶない。

ああけっこう続いてる、、

行っていい箇所は赤と黄色で明瞭にペイントしてある。よく見て安全箇所をのぼりましょう。これを見落とさないうちはまだ登れる。さんざん「しんどい」「おかしい」「むりかもしれない」等とめそめそ言っていたが、やらされると体は動くので、よくわからない。

三点保持で全身を動かすポイントはこの山頂エリアだけなので、要は腰から上の体力は残っていたことになる。それだけか?メンタルが変なだけで実際の体力はまだ余裕があった?よくわからない。

 

◆13:32~真ピーク

へろへろになりながら、なんとか岩場を越えて、これでもう頂上だろうと。

思ったらですね。

(´・_・`) あ???

 

なんか聳え立ってるんですけど???

 

全身から力が抜けるというか、内臓が乳酸の汁で満たされるように、手に負えないものが走った。

 

まさか今まで見てきた天狗岩、その先のピークぽいものが偽物で、三度目の正直で本当のピークが来るとは考えてもいなかった。

いつも固く禁じていた「目の前に見えるものを信じるな、甘えるな」という大原則を、私はやすやすと破り、甘えきっていた。

 

こんなものをまだ登れというのか?無理だ。

頂上も見えない。このピークの先にあるようだ。

「ここで引き返すわ」と言いそうになった。

どうやって歩みを進めたのか分からない。たぶん師匠が「もうすぐ頂上や」と何度も繰り返し(塩見小屋以降はずっと言ってる)、判断をやめてその言葉に乗っかったのだと思う。自分では何も考えていない。

 

いつもなら岩を歓迎していたのに、なぜこんなに恐れて嫌がっているのか、いや、対峙を心底めんどくさがっている。土日に外出を嫌がって寝転がっているのと変わらない。何が自分の感覚を支配しているのかが分からなかった。山のど真ん中に来て、標高3000mにまで来て、家の中でオフを過ごしている時と何にも心身のスイッチが切り替わっていないのなら、異常だ。それとも、異世界や非日常がいよいよ「普通」へと色褪せてしまったのか。

 

山のクリシェ化というのはただの形容ではない。全身を襲う症状だ。異界として認識できず、それ相応の対応ができず、心身が置き去りになってしまう。そこへ入れ替わるように、疲労が支配してくる。

 

まあ登るんですけど、

道はあるんで登れる。すれ違った人が「砂場で雷鳥4羽が砂遊びをしてましたよ笑」と教えてくれた。わあ、らいちょう。花が咲くように明るさが戻った。みたいみたい。そうか、普通の人は雷鳥を見ることはないのだった。私も山を登り始めたとき、雷鳥に出会って、すごく喜んでいた気がする。そういう感動が自分にもかつてあったのだということを薄っすら思い出した。自分が遠い。何もかも遠くなった。

 

雷鳥どころか岩がすごいんですけど。

まあこれは黄色のところを上にいって横移動して掴んで歩いたらいける。

見た目ほどザレてないのでいける。ホールドが無限にあるので安全。

道間違い防止も優しい。突き出してる岩は全部安定しててホールド完璧。

鎖もあるけど下山時のサポで、登りは岩のホールドのほうが頼りになる。ここにきて全身を三点支持で動かしていたらちゃんと体が動くようになった。疲労のメカニズムが謎です。要は黙って動けやということなのか。

上に鎖があるね。適当に掴んで登っていったらOK。

あーはいはい掴んで上がる。

左に振って鎖をする。鎖がルート明示になってる。

極端にガスってなければマーキングが全部教えてくれる。

鎖が断続的に現れる。斜度70度あるかな、まあ濡れてないのでホールドばっちり。これを逆「く」の字で登っていく。

 

尽きたと思っていた体力が実は残っていた。出力系とフィードバックが壊れていたのかな。二人曰く「そんなにしんどそうとは思わなかった」「まあいつものことやから何とかすると思ってた」あ、、そうですか、、、

だんだん頂上も見えてきたぞ。おまえのすがたをあばいてやる。山は恋愛。はあはあ。息は切れまくっています。何のために私は登っているのか。誰の意思で歩いているのか。情熱とかやりがいとか衝動とかではない。日本経済ぐらい曖昧なものになっている。

あと雷鳥はいませんでした。

今までで一番ひどい高山植物の写真。もう「とりあえず記録しなければ」という義務感だけでシャッターを切っている。汚い山菜みたいな写真。これはインスタ勢にもAIにも真似できないだろう。経済性に反するものは誰もトレースしない、それがゆえにブルーオーシャン、いや無色オーシャンとなる。誰もいない。

さすがにあれでは何を撮ったか分からんと思ったのか、近づいてシャッターを切るなどしていた。なんの草かわからないけど高山植物なので皆さん後は調べてください(放棄

 

 

◆14:15山頂(西峰)⇒14:20山頂(東峰)

結局山頂にまで来た。あの時の絶望は何だったのか。人の絶望は初期印象に過ぎないということがよくわかる。新しい仕事振られたときの「いやそんな業務むりですて」「やったことないからできません」と盛大にイヤイヤしてみるも、Excelで分解していったらわりと平日5日間で消化できたときのアレに似てる。むかついてきた。しんどい。

中途半端な温泉みたいなのが山頂「西峰」3046.9m。

 

わー山頂だーと喜んだが喜びきれないのが徒歩5分のところに「東峰」があり、そちらの方が標高3052mで約5m高い=実質的な本当の山頂だということ。ダブルピークという珍しい山です。

 

下から見上げた際にはしんどすぎて「もうどっちでもいい、いかへんわめんどくさい」と真剣に思っていたが、さすがに目の前にあるとザック放り出して駆け足で飛び込んでいった。元気やないか私。どうなってんのこれ。、

まあまあ遠い。

1分で着くわと思ったが普通にデカくて遠い。山頂直下に立ってるニキでサイズ感をご確認ください。

 

後にニキから「スマホ充電が0%になったがバッテリー充電ができない、もしバッテリーを持っていたら貸してほしい」と乞われ、しかし充電できず「登頂の写真を撮って、メアドに送ってほしい」と依頼される。中国か韓国かの御仁だった。ガタイがよかった。下山後、ホットメールをした。こころあたたまる交流。徴兵制について質問すればよかった。

近鉄の駅名表示みたいな頂上である。よくがんばりました。

まさか登頂できるとは思っていなかった。誇張抜きでこれは予想外だった。頂上をマジで諦めていたのに登頂したという経験はあまりない。体調だけでなくモチベが死んでいる。

嬉しいというより、実感がなかった。途中から自分の意思もなかったので、達成感もなかった。実に奇妙な山行だ。書いている今も、変な気分がする。やはり脳がちゃんと働いていなかったのか。

 

昼過ぎなので雲が上がってきており、景色はガスガスで眺望がきかない。良く晴れていれば富士山まで見えるそうだ。

記念撮影だけして、速やかに下りる。

 

◆14:30山頂 ⇒15:35塩見小屋

下山で時間を稼ぎたい。幸いにも下りはわりとスムーズに足が動いた。同行者も下りは得意で、立ち止まることなく進んだ。

砂地になんかいる。

 

あ 雷鳥

4羽で、うち1羽は母鳥。子供を見守っていたのだ。

人間3人がわきわきしながら接近してくるので、徐々に逃げていきはするのだが、よたよた歩いていて戯れのようだ。全ての動きが丸みを帯びていて、もっさりとしており、どんくさい鶏のように歩く。清少納言に見せたらいけずを言いながら愛でるだろう。未成熟で、丸くて、危機感がなく、愛らしく、無害で、飛翔がなく、日本的なものの全てが詰まっていた。

 

妻氏が頭のネジが飛んだようによろこんで狂って雷鳥を愛でまくっていたが、私は私でレアな珍種に目が釘付けになっていた。

ベニヒカゲ。環境省レッドデータブックで「準絶滅危惧種(NT)」に分類され、長野県の天然記念物に指定されている。生で見たのは初めてだと思う。図鑑でしか見たことのない種に出会えるのは喜びだ。よろこんでるやんじぶん。はい。珍は好きです。

 

足元をしっかりすれば安全。マーキングを確認して辿り直すだけ。この山頂は優秀な道場として活用できる。塩見岳頂上部分だけ、もっとアクセスが容易で普段使いできる距離にあったらよかったのに・・・。芦屋ロックガーデンの一部に来てくれませんかね。

鎖箇所もだいたい普通にいける。正面向いて下りるのがきつい場合は素直に後ろ向きに足場を確保しながら降りるだけでより簡単になる。良い岩場だ。道場に使いたい。ここにきて評価が爆上がり。元気になってきたのか?笑

山頂エリアで最後にすれ違った人達。おそらく塩見小屋の宿泊者で、空身にしてピークハントだけしにきたのだろう。いいなあ。本来そうあるべき。私達はここから山小屋の夕飯を賭けた下山タイムバトルが待っている。キツ。

山頂直下の登り、振り返ると圧倒的な物量で存在感が凄まじかった。

さすがにこれには威容を感じた。生き物の次元でこんなスケールのものは存在しないし、想像の中にもない。神を感じたり、超存在と直結するが如き天啓を得るというのはごく自然なことだろう。それがまだ理解できているだけでもよしとするか。

足場は岩々していて、意外と浮石もないんで安全。

山頂付近はピンク色の岩が目立ち、今思えばもっと注目しておくべきだった。疲労がひどかったため写真すらない。チャート(堆積岩)らしい。

岩の下りがひたすら続く。安全安全と言ってますが本当に疲労が足にキてると転んでえらいことになるよ。雨で濡れてたら怖いな。晴れて乾いてると最高。全てがホールドできて楽しい。

あ 塩見小屋がチラ見えした。すぐそこやんと思ったがここからまだ20分かかった。遠いねんな。

天の岩戸が開くように、山を真っ二つにする天の光。これはスピった。体内の氣が浄化されて血液が蒼く輝いて世界がひとつのパンゲアだった頃の記憶に包まれ、私の脳裏は幾億匹の三葉虫が一斉にプランクトンを捕食する音に溢れ、左右の目は互い違いにグルグルと回って原始のスープのように黄色いものを失禁した。光のスリットからアマテラスの両手が伸びてきて、私の目を通してその手が脳梁を掴み、左右に押し広げ、乳を揉み揺らすように左脳と右脳を揺さぶった。「おまえは私の僕、太陽の下僕」スピった。

スピってたら塩見小屋に到着。もうマジ疲れて無理。

 

◆15:35~16:00 塩見小屋

腹の調子も悪いという話を登山口のあたりでしていましたね?何となく腹が変な音を立てており、下山の追い込み時にトラブると怖いからここで出し切っておきます。

 

携帯トイレを300円で購入。使い方のレクを受ける。

切り取り線に沿ってフチをちぎると本体が大きな袋として広げられる。底に水の吸収パッドが付いている。切ったフチは使用後の袋を縛るヒモとして使う。使用後はトイレの外の回収箱に捨てる。

ヴァーー(音

 

塩見小屋の外にあるトイレは携帯トイレ専用で、水の少ない岩々した厳しい環境であることを物語っていた。使用後のトイレ袋はまとめてヘリで回収するので袋をよく圧縮しておいてくださいねとのこと。

 

トイレ後、屈んだりすると頭が痛く、ゆっくり休みたかった。

小屋の外で多くの人がベンチに座って、くつろいでいた。夕飯までやることがないので、平和な時を過ごしているのだ。羨ましい、本来そういう時間の過ごし方が理想的だった。許されていない。下りなければならない。頭が痛い。高山病なのでは。

 

行動食をとるべきだが何も食べる気になれない。ドデカミン、ポカリも飲む気がしない。義務的に口にしているだけで、本当は真水が飲みたかった。水分補給をしながら、水に飢えていた。血液の浸透圧が狂ってきているようだった。水はデポで置いてきた。

ゼリーを貰って、それは飲み込めた。逆にいうとゼリー以外は喉を通らなかった。

 

( ◜◡゜)っ 下山へつづく。