nekoSLASH_記録編(日常・登山)

『nekoSLASH』分家。日常、登山、廃墟、珍スポットの記録集。

【登山】R5.3/12 雪の武奈ヶ岳(前編:登り~御殿山まで)

「私、滋賀の雪山を撮りたいんです」、写真仲間みっこ氏から相談を受けて「お、おう、武奈ヶ岳しよう、しましょう」と頷いていたのも束の間、1月は居ぬわ、2月は逃げわ、3月中旬に差し掛かってきて、慌てて雪狩りに挑んだのであった。

雪残っててよかった。

 

みんな大好き武奈ヶ岳、最もアクセスの手軽な坊村:「葛川森林キャンプ場」(2022年4月から今後のあり方検討のため休止状態)、「明王院」から取り付こうと思うと、大津市街地から車で小一時間ほどでアクセスできる。

 

今回のプレイヤーは冒頭に紹介したみっこはん、山の師匠、私の3名。

2月中に雪山撮影に行こうという話があったのだが、その予定日が間の悪いことに、例の最凶寒波の到来直後なのだった。山の積雪よりも現地の路面凍結が怖く、道中でスピン等で事故る可能性が高すぎると踏んで、中止したのである。うわんうわんとカーブする国道367号の山道を走って「先月やめといてよかった」と思った。スタッドレスでも事故るときは事故るのだ(※経験者です)。

 

武奈ヶ岳自体はなんも難しくない。登頂まで片道3時間のお手軽コースです。難所もなく、誰でも道を歩いていれば着くし帰ってこれる山。

それにブナ(略称)は今回で3回目である。だいたいどういう山かは分かっている。平凡で安全で、しかし途中の「御殿山」からは山頂への最後の登りが一望できる、素晴らしい眺望を備えたコースだ。性格もルックスも成績も良い、クラスの人気者みたいな山だ。

それに雪がなんぼ降ろうが、まあ1月・3月ならアイゼンも要らない程度である。

 

(参考)真逆の東側:比良山スキー場跡ルートから登ったときの。1月上旬で雪が無かった。

hyperneko-daily.hatenablog.jp

hyperneko-daily.hatenablog.jp

 

今回は2月下旬の最凶寒波によってしこたま雪を溜め込んでいる。直前の3/9~11(土)あたりが5月のような陽気に転じたのは予想外だったが、ヤマレコを見る限りまだ上の方は雪をキープしているようだ。これが事実上今春のラスト雪チャンスという感がある。タイミングがよい。

 

 

◆8:30 坊村:葛川支所の駐車場~登山者カード提出箱~牛コバへの道(誤り)

はい大阪から2時間弱で「坊村」、葛川支所の駐車場に到着。無料で沢山停められる素敵なスポットです。かなり台数が多い。みんな雪ハントに来てますね。隅っこにきたねえ雪のかたまりがありますが、さすがにこれを撮っても腹は膨れません。登るしかない。

「葛の里日曜市」、どこにも見当たらなかったが、冬季はお休みの模様。

 

取り付きの「明王院」への道中、かなりちゃんとした公衆トイレがある。これがちゃんとしていて。紙もあって。後にすげえ助けられたのでした。(※筆者は下山時に下り飛竜に襲われ、便意で意識が飛びそうになりました。あぶねえ)

 

登山者カードを出します。ブナで遭難するとかってどうよ。※しっかりとフラグを立てている音

 

なんか車道が続いている。ブナの取り付きってこんな車道だっけ? 坊村ルートは10年ぶりぐらい、登山を始めたばかりの頃に登ったきりなので記憶が朧気である。確か初手から杉林の急登をめちゃめちゃ登らされてゲボッてなった記憶が・・・

 

歩いていると残雪のかたまりに遭遇、この低地では雪が珍しいので撮影。わあい。

みっこはんは中判フィルムカメラで作品制作をしているため、1本8~10枚ぐらいしか撮れないのである。しかしどのメーカーもフィルム製造を終了している昨今、価格高騰激しくフィルム5本で1万ウン千円したとか。もちろん現像代・プリント代は別。状況はあまりに厳しい。次に一緒に山に行く時にはデジカメになっているかも知れない。

 

なんか車道が終わらないんですが。

 

師匠「あっこの道まちがってる」うへえ。

 

「武奈ヶ岳で遭難とかwww ないわwww」と腹の中でへらへらしていたら10分後にこのざまです。遭っとるわ。

3人中2人がGPSだのヤマレコのMAPだのを使ってくれていると、正誤判定も早くて助かります。反面、アナログ地図持ってきてるのに全然チェックしない⇒ミスが野放しになるというリスクも。前回も似たような展開あったな・・・。決裁ルートに人を増やすとかえって「誰か見るやろ」とミスが野放しになる例の現象です。(私が仕事をさぼってるのが全面的にわるい)(自覚はある)

 

登山者カードを入れた分岐ポイントまで引き返します。やれやれ

 

 

◆9:03 明王院~取り付き、杉林の急登開始

「地主神社」「明王院」を通り過ぎます。けっこうちゃんとしたお堂。今回は道間違いで謎に緊張感が高まったというか一気にめんどくさくなったというか、全スルーで雪ポイントまで行きたい気持ちがあれです。

( ´ ¬`) うわあ・・・。急登・・・。

 

これだよこれ。初手から助走なしで急登のつづら折り。あんまり容赦がない。記憶の通りだった。「杉の木の生い茂る中をひたすらガンガン、ジグザグに登らされる」、これです。急登アレルギーが出そうになった。

でも時期が良いんで楽です。6~8月にやらされたら暑すぎて汗ドボドボで大変ですわ。3月は気温10℃前後で全然楽。急登と言っても楽です。楽なんです。こんなもんはね、趣味や享楽のたぐいですよ、きみ。これは、

 

クシュン。

 

 

あ。

 

 

ズズズ・・・(液体

 

 

ああっ・・・・

 

 

 

(  >_<) 花粉!!!!!!

 

 

3月上旬のスギ林に、ノーマスクで突っ込んできた花粉症持ちのホモサピエンス。山から見れば自殺願望に取り付かれたレミングにしか見えないであろう。くそっ。今年は花粉症が全然出ないから「おっ体質改善されたのかな(喜)」て勘違いしてたんだよ!!! なんだよ花粉量が少なかっただけかよ!!! 本当の花粉を浴びたらやっぱり発症するのかよ!!!!! チクショーーッ

 

クシュッ

あかん。短時間でさっそく鼻がバグり始めた。毒ガスの発生源で思いっきり荒い呼吸しとるんだからそりゃ回るの早いわな。くっそうコンタック鼻炎カプセルは車に置いてきた、、山登りにクスリ携行するなんてジャンキーみたいなこと思いつかねえよ。あ、カフェイン錠剤はあるな(´・_・`) 意味ないな(´・_・`)

 

クシュン  クシュン

あ。師匠がめちゃくちゃクシャミしてる。もうだめだこのパーティー状態異常でしぬ。かふんレベルが上がるごとに、マヒ、こんらん、くらやみの状態異常がそれぞれ割合で発生します。あかんもう考えが散る。ギーッ。

 

国の発展、生活の向上のために、全国の山を改造して埋め込まれた産業植物が、繁殖の本能は手放すことなく大量の因子を撒き散らし、人間の思考と感覚を毎年必ず根こそぎ奪いに来る・・・クシュン。なんと良い設定だろうか、クシュン。これを活かせば良い作品が幾らでも作れそうではないか。私もTwitterでポリコレにキレてないでもっと創作世界の構造と物語を作るべきだったのだ・・・クシュン。もうだめだm。

だめだめ言いながらも足腰に支障はないので順調に登っているの図。スギだらけやないか。ぜったい同じ原理で太陽光発電パネルも将来悪さすんぞあれ。火力・水力・原子力以外で作られた電気を混ぜると発狂するとかさ。なんかこう。創作物を。ああ。私は創作できないのだろうか。できん。

 

中腹までマスク着けて登ってきた人がいたのか。高地トレーニングとしては良さそうだが純粋にしんどそう。マスクって土に還るのか?

おっ様々な不織布が土に還るかを1年越しで実験してる御仁を発見。

asakuraya.hatenablog.com

あー(´・_・`) 素材によっては全く分解不可能ですね。新型コロナ禍の3年間で世界中にばら撒かれたマスクが、地球の環境に大きな影響を及ぼしててもおかしくない。

 

 

◆9:30~ スギ林の倒木エリアが続く

9:37 倒木がすごくなってきた。根っこからいかれてるの、2018年の地震&台風直撃による被害の痕だろうか。

 

登山道は概ね確保されていて、誰かが切ったり退けたりしてくれてるっぽい。一部迂回道もあり。山小屋もないのに誰が。地元の方々の好意なのだろうか?林業関係者かな?

倒木の根本の造形がまがまがしくて良いです。禍ってますわあ。ニュートラルな邪悪さ(なにそれ)がある。なお既に暑いので上はシャツ1枚。下もタイツは履かずズボンのみ。風もなく、主な障害は花粉のみ。さすがにマスク登山は面倒くさくて無理。

 

( ´ - ` ) 市役所土木局の災害対策研修に来てるような光景が続きます。これ登山でしたよね? 土木色が強いなあ。つちえぐれてますねん。これって放置しといたらいつか何とかなるもんですか? 山「しらんわ。」 私「ッス。」 時が解決するのであろう。

 

なんかミシミシ言ってた。鳥や虫ではない。倒木の重量が生きている樹に襲い掛かっているのだ。自然が自然を破壊し、抵抗する。目に見えないスケールで超重量級の攻防戦が繰り広げられている。熱い。ニュートンは林檎ではなくこういうのを見た可能性はないのか。ミシミシ。

 

9:53、ここでもミシミシ、ぎりぎり言ってた。折れたり曲がったりした樹が立ってる樹に寄り掛かって負荷を掛けている。なんで人間社会の通勤電車が自然界で再現されているのか・・・。しかし登山の片手間にちょこちょこ撮っただけで、倒木ラッシュの異様な光景がけっこう集まった。古代兵器のようなフォルムになるのはありがたいが、いつか腐って土に還ったりするのだろうか。山「知らんって言ってるやないかだまれ」 私「はいすいませんすいません」 はい。

 

倒木ファンタジーと分解むりマスクの2つが収穫でした。自然の中に人工・人為や差し障りを見い出すのが好きです。性格が悪いとも言う。ああだから私、グランピングとかキャンプ場でのファミリーテントとか興味ないんだわ。あれらは不純物や予期せぬ事態を全てカットし、シャットアウトしている。いわば上澄み概念としての「自然」を食品添加物のように後から付与しているだけで、自然のコスプレなんだ。私はやっぱり矛盾に満ちたガチの自然がいい。

 

10:19、ホワイトさるのこしかけ。きれいですね。けど触るとふわふわじゃないよ。巨大倒木ゾーンを脱し、高度が上がってきて樹が細くなってきた。花粉症がどうなったかもう忘れましたけど完全には抜けてない。あれは一度スイッチ入るとステータスの異常フラグがずっと残る。

1時間も登れば、標高846m:夏道・冬道の分岐地点に着くのだが、まだか。80分ぐらい経ってるが・・・。ペースがおだやかなので、汗をかかず体力も消耗しない。いいことです。にしてはかかりすぎているか。

 

 

◆10:21 谷からの雪ゾーン、夏道分岐

ミニ稜線的なところへ出ました。おおー雪がある。たくさん雪がある。

わあい撮影会を開始。

 

さ、寒い。

 

おそらくはるか下、口ノ深谷(たぶん)から寒気が上がってきているのだろう。空気の質が別物である。ずっと下の方まで雪が続いていた。立ち止まって撮影しているとやたらめったら寒い。あかん体温。

調べてみると「口ノ深谷」は滝が連続する危険&高難度な沢登ルートで、好き好んで攻略している方々の記録が色々出てきてびびりました。沢やら壁やらはナチュラルにクレイジーな御仁が多い。私には無理だった世界ゆえ、こうして大人しく登山道を2足歩行することに決めたのだった。

 

10:23、夏道・冬道の分岐。コースタイム1時間のところ、1時間半かかってる。ウエー。さぼったおぼえはないぞ。まあいいけど。おかげで体力はあまり減ってない。ただし花粉症。

 

で、ラッセルとか強いられたら嫌だったので、あえての「夏道(無雪期ルート)」を選択します。アイゼン持ってないし。スパッツは装着済み。取り付きからずっと着けていたが足首が暑くて暑くて外したかった。

雪がないどころか、きもい黒てかりする植物がいっぱい出てきた。きもい。写真ではフラットに描画されているが、肉眼では「黒くテカる何かが大量に斜面に繁茂してる」だったので、キモかった。

 

部分的に雪が残ってますね。でかい瘤が気になる。来たのが2月下旬だったらこのへん一帯も全て雪だったのだろうか。雪はだいぶ溶けていて踏むとシャクシャク。

 

10:36、雪が増えてきて、雪歩きが増えてきた。かなり溶けて流れ出しているが、夏道のわりにしっかり雪山を味わえる。こうでなくてはいかん。暑いだけだったからな。

 

雪解け水がちょろちょろ音を立てていて、かなりの量が溶けて流れている。すご。この水が集まって琵琶湖になるんですかね。琵琶湖って周囲の色んな山の記憶とか性格を結集させた集合生命体だと思うとなんか恐ろしいな。ちょろちょろちょろちょろ。

 

そして光景は雪山と化した。積雪量は靴のソールまでで、融解の激しいところは地面との間に空洞ができ、踏むとズボッと落ちる。だもんでトレース辿ってたら罠にかかったように転びそうになることが増えてきた。逆に何もない斜面を登るときはツボ足でバコバコ踏みしめて進める。

こうも暖かいと来週末にはもっと残雪は小さくなっているだろう。雪が無くなると、このまったりした地形から正しい道をちゃんと見つけないといけない。トレースがしっかりしているので全く迷うことがなく、足元を見ているだけで自動的に登山できるのが超らく。らくです。

 

あ先行の登山者さんが下りてきた。「冬山ルートの方が歩きやすいな」ほう? もっと雪があって足元安定してるのかな。この時点で3人の中に「帰路は冬山ルートで」方針が決まった。

斜面の登りは雪がでんでろに溶けてて、ズボズボ踏み抜く。土の地面を歩くと下の粘土層でドロドロになる、たまに滑る。やだあ。まあこの融雪が琵琶湖の水源なのだと思うとありがたい気がするから文句言うまい。いい水になるんだょ。ただスケールがでかすぎて循環のイメージが全く湧かない。そのかけ離れた個々のシーンをうまいこと繋いでサイクルを紡ぎ出すのが写真作家の妙技というわけか。みんなえらいなあ(他人事)。

 

なんかエロす。路上で寝てる裸体みたいな樹やね。

 

足元では小川未満の流れが旺盛に発生している。あっちこっちでヂョロヂョロ溶けまくってせせらぎですわ。せせらいでますわ~。ヂョロヂョロ。雪が無くなるのは寂しいが、雪と水と湖のサイクルを感じられたのは良かった。さすがに舐めたり飲んだりはしてないので味は不明。

 

◆11:01 合流地点 ~ 11:21 御殿山頂上

11:01、夏道・冬道合流地点。

溶けているとはいえ、雪だけの世界になってきました。聖地を感じますか。そこまでじゃねえな。でも雪なんだよ。汚れてても崩れててもこいつぁ雪なんだよ。それが私達の望みだった。白いって良いことですよね。清らか?デトックス?癒し?わかんねえ。たぶん違う。そうさな、角度の違う暴力があって好き。おほほ。

 

これトレースがしっかりあるからゲラゲラ笑ってられるけど、何も無かったら道がよく分からないのでは。事実、あちこちにロープが張ってある。「下山時でやらかして、別の谷へ迷い込んだ所をぜんぶ塞いだんちゃうか」なるほど、、地味に恐ろしい山である。下山時にガスってたら厳しいかも。

 

この先は「御殿山」ピーク1097mまで登るだけ。取り付きからずっと登ってきたのは、前座である「御殿山」であり、その頂上を越えた奥に「武奈ヶ岳」ピークが控えているのであった。ラスボスだと思ってたら真のやつがその先にいる、もうRPGすぎてときめきますわ。

( ´ q`)足元ガボガボ。まだ量が多いとはいえ、雪さん、もう限界か。至る所で融解しまくっており、水溜まり化しており、歩いていてもズボズボ抜ける。春が来てしまった。なんやろう、一つの場所が徐々に変化していくというより、「冬」という生命を食い破り、殺して、「春」という別の生命が現れる感じがする。生殺与奪の車輪を見ているのだ。言うてたらみっこはんが何度も転んでいた。ああっ、ころされる。これ70代とかなったら捻挫するんじゃないだろうか。

 

せっかくなので動画も。


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ガボガボ足がはまることを除けば、いたって安全。スパッツと水の染みない靴さえあれば良いです。手袋すら要らない。こんなにお手軽な雪山があっただろうか。もっと寒くて雪が凍ってたらアイゼン欲しいかな。でも御殿山の登りは風も特にないからこんなもんでは。

地面はどろどろ。雪を避けると粘土層で滑ってこけます。泥を踏む時のグチャッていうねちこい音が「春」の正体です。やつの正体は土! グチャッ。

 

あ。御殿山頂上だ。先客がいますね。みんな登るの好きだなあ。

 

11:21、御殿山頂上。

夏道・冬道の分岐からほぼ1時間で登頂。コースタイムではこの先の斜面を下りきった「ワサビ峠」まで行って1時間ですって。いやむりやし。はやすぎるわ。楽勝だと思ってたけど無雪期よりは足とられてたのかな。

「武奈ヶ岳」本体はここから一山越えてゆかねばなりません。このまま書いてもいいけどいったん切りますか。

 

では後編へつづく( ´ - ` )ノ

 

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