nekoSLASH_記録編(日常・登山)

『nekoSLASH』分家。日常、登山、廃墟、珍スポットの記録集。

【登山】笠置の岩場でザイルトレーニング

2011.9.17(日) 笠置の岩場でザイルトレーニン


奈良県は木津川沿いの集落、笠置(かさぎ)へ行ってきました。
今回は趣向を変えて、一般登山道の登山ではなく、主にザイルを使用した技術訓練を行うことにしました。
同行者は、いつもの登山と同じ師匠です。
さすがに登山には慣れてきたが、技術訓練は一人では全く出来ません。



JR笠置駅関西本線というローカル区間であり、なんと非電化区間で、ワンマンカーのディーゼルカー運転です。そして、無人駅がほとんどのため、イコカが使えない。降りるときに手間取りました。

 

 

駅を降りると


もうあと数秒後に殺される人の像が我々を出迎えてくれました。


ものすごいギリギリの状況。
命の尊さを噛み締めて木津川に行きましょう。



さて木津川沿いのキャンプ場に来ました。徒歩5分で料金場に着きます。
なんか駅からの道中が見覚えありすぎて、尻がむずむずしてしょうがなかったのだが、ここってもしかしたら、大学1回の夏に写真部の合宿で来たんじゃないか?という疑念。



あたり。
合宿で来たわここ。まさにここ。

わけのわからん巨石とかがお出迎え。
すごい丸い。ツルツルな上に丸い。


当時は、というか現役大学生というのは初期衝動だけは旺盛だがナルシストであり、その上にアホなので、「高い所から川に飛び込まないといけない」「夜寝てなかったり、飛び込んだり、人並み以上に飲酒するのが美しい」みたいな不文律のノリというか美意識が出来上がっていて、それでみんなが率先して川にくるくる飛び込み、それでちょっといい感じのノリを共有していたわけだが、<span class="deco" style="font-weight:bold;">それが実はただの川遊びに過ぎなかった</span>ことを知った。


飛び込むのは重力に従っているから基本的に自然な行動である。登攀は違う。わざわざ金具とザイルと経験者のパートナーを準備して行うわけで、非常にめんどくさく、不自然である。そして実際、しんどかった。なんでたかが3m、4m程度の岩を攀じ登るだけで俺はこんなに恐怖に襲われ、疲弊しているのか、わけがわからなかった。手ごわい。日頃からボルダリングをやっている人間なら問題はないだろうが、私はボルダー脱落組である。実はジムに3回ほど行ってやめた人種であるから、色々と中途半端なのである。はい。


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( ー_ー) 厳しかった。
厳しいときの父親より厳しかった。
重力とか岩とかがね、厳しかった。


ハタ目には「あー、言うても岩でしょ?登れるじゃん」て思うのですが、
こいつが手ごわすぎる。この岩は鬼門。でかい。


この岩を登るのが手ごわい3つの理由
(1)川の流れに磨き抜かれてツルツルだから
(2)オーバーハングだから
(3)登りにくいところをザイルで登るという趣旨だから

 

では各論へ。
(1)ヤバい。
3点保持するのに足を掛ける場所がない。
写真からも何となく伝わってくると思うが、岩肌が妙にストンとしているのである。
そしてこいつは巨岩だった。ゆえに、対応に苦慮しすぎて、倒木を2本縦に立てて足場代わりにして攀じ登った。


写真のように誰かが上に登って、ザイルを持つことが出来たならば、ビレー確保してもらって力技で何とか直登することが出来る。というか、ボルダリングを極めし者でなければ、それぐらいしかまともに登る方法は無い。お陰様で、良いザイル練習になりました。ハァハァした。


(2)反り返りは反則。
オーバーハング、すなわち、上部が90度以上に迫り出している形状。
常人、しかも一般登山においては、90度以上の傾斜を攀じ登ることは想定しない。それはもはや登山ではない。登攀である。
しかし、緊急脱出などセルフレスキューにおいて、出来ることは増やしておきたいということで色々やってみたが・・・この岩を地面から登るのは不可能だった。今の我々に出来ることはあまり多くはなかった。巨大な他の岩石が隣り合っている所を足がかりにザイルとともに攀じ登る程度。ぐすん。この岩の裏側は凄まじい表情をしていて、天井が完全に屋根のように突き出ていた。ボルダリングの道場主でもなければ普通には登攀できない。


(3)は仕方ない。まあ趣旨がそもそも、登山中にイカンことになった際の脱出等に関してのトレーニングだったので。
なのでシューズも登山靴です。これがきつい。
何度か、カメラ担いで登ろうとしたものの、それどころではなかったので断念。



最初はザイルをそのまま掴んでガシガシ登るという最も単純な方法で練習。
しかし人間一人分の全体重を、このヒモに掛けて、上で待機しているビレイ役のパートナーが踏ん張って支えるという単純極まりない構図のため、慣れていないと非常に怖い。巻き添えにして落としてもうたらどないしよ!とか色々思うんですよね。そないに心配することもないんですが。


慣れてなさすぎて、支点確保時に自分まで一緒にずり落ちそうになったのはご愛敬。危ない。本当に危ない。二人で一緒に落ちたら何をしているのかまるで意味がわからん。


ザイル単体の訓練が終わったら、次はハーネスを装着し、懸垂下降の練習に。


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手頃な岩があったので、頂点の出っ張りになっている岩にザイルをかけ、ビレイにして上り下りの練習。



登るのに適した巨岩が多く、いつの間にか笠置の木津川一帯は、関西屋外ボルダリングの聖地みたいになってしまってました。「この岩や、youtubeで見たわ」とかでグループで攻略に来る人など。もちろん、単身で仏道修行のように黙々とマット敷いて登る人達も。


迂闊にも、ボルダリング視点が乏しいので「でかい岩=風除け、日除け」という登山的認識が先立ち、岩のふもとでコッヘルで湯を沸かしたり焚火を起こしたりしてひるめしの準備をしていたら若者グループに暗にどかされてしまう。このへんで登山派とボルダ派の確執が過熱化してすごいいがみ合いになったらおもしろいのだが…。



余談だがこの子供らは私たちが到着した10時半ぐらいから立ち去る15時すぎまでずっとこの岩の上で、こうして狂ったように遊んでいた。炎天下で、直射日光がかなり強かったのに、体力だけで言うなら私なんかを遥かに凌駕している。なんとなくバック挿入スタイルだが大丈夫か。



対岸の岸壁。
実際は6、7mはある巨大な岩だったりするのだが、えらく小さく写ってしまった。
大学時代の合宿で、みんなでレミングの自殺みたいに、ぞろぞろ登って川に飛び込んだなあ。
なんだったんだあれは。

 


一番大きな巨岩でずっとザイル練習しました。


写真では分かりにくいが、オーバーハングしていて、そのまま上から降りてくると足は付きません。
上でしっかり支えて、懸垂下降で何とかしたが、やはり初めてなので、自分の体重の全てをパートナーに託すというのが怖すぎ、どうしても降りることが出来ない。懸垂下降とは、簡単に言えばロープで宙づりになりながら降りてくるというだけだから、いざ自分が降りるにせよ、支点確保するにせよ、非常に怖い。


恐怖心から、ただ宙づりにぶらーんとしていればいいのに、要らん手をいっぱい出しすぎて、自分の体とザイルと岩の間に腕を挟んでしまって、ずりずりに擦って降りてしまうので、生傷がひどかった。


しかしザイル訓練としては非常に充実した一日となりました。
基本技術を少しでも齧っているというのは大きい、とのこと。さてどうなるか…。


この笠置の町はさびれながらも少々浮かれており、ベッドタウンにさえなっていないぐらい周囲を山と川に囲まれた田舎なのだが、やたら珍走者がパァンパァン鳴らして巡回している。また、時折、元気のあるストリート絵が、萎れきった商店街に描かれていたりする。



なぜ笠置で黒人文化をリスペクトしているのかが分からない。



カニシさんとこの坊ちゃまは元気が良いようだ。ていうか酒ちゃんと売ってや?



一方で松本さんは消えかけていて、商品も末期のソ連ほどにしか並んでいない。
人生色々である。

 

そんなこんなでした。