H29.3.15 鳥取砂丘は嵐でした。
\(^o^)/ 嵐でした。
所用で鳥取にいたのですが、この日に限って冬の気候がぶり返し、日本有数の観光地・鳥取砂丘が暴れていました。
コォオオオ
観光地・・・ ですよね?
( ゚q ゚ ) ですよね、
ザアアアー
ぜんぜん観光ちゃうやんか。
奇しくもこの日は、寒の戻りが厳しい日であった。
なぜ戻るのか。放蕩息子と寒気は戻ってこなくていいものワースト2に数えられている。
露骨に北の大陸から吹きおろしている。そりゃ寒いですよ。
砂丘センター ドライブイン(土産物売場)
「鳥取砂丘展望台」からの光景。カメラを通して見ると実に普通に見える。これが写真の嘘というやつで、実際には風が強い上に雨が斜めに降っており、非常に寒い。撮影中もばちばち雨が当たり、観光意欲をがんがん削ってくれる。
これは傘をさしてもバフーされて意味がないんではないか。
外に出るのが面倒くさすぎて「砂丘センター」土産物売り場から動くことができない。
「名探偵コナン」の作者、青山剛昌氏は鳥取出身であるため、鳥取県の名産物の一つとして強力なコンテンツとなっている。なぜコナン君の周囲で事件が頻発するのかという謎は30を半ば過ぎても未だに理解できない。
観光客を乗せていなければ、ただの現代美術の彫刻作品である。千年後の未来人はこれを見てオブジェだと評価するのではないか。
さむいので中に戻る。
とうふちくわが脚光を浴びているということで、少々試食。
くせのない優しい味、しかし特徴がないかといえばそうではない。
買って帰ったが、そのままだとあっさりしすぎて、ごはんのアテではないし、主食にもならない、うーん。
コナンキューピーである。キューピーとしての原型はもはや薄い。
ぐでたまも既に懐かしいキャラとなりつつある。
青山剛昌氏と並んで、山陰地方では水木しげる先生が神である。しかし地域の特産品としてアニメやマンガのキャラクターが並ぶ国というのも少々珍しいのではないか。このあたりの事情については他国の土産物事情に詳しい方の意見がほしい。
店員さんがどしどし勧めてくださるのが、ちくわである。また売場に戻ってきた。
かに、たい、あご(トビウオ)、ねぎとうふ、とうふとレパートリーが多彩。
スイーツも多数あったがなぜかちくわの写真しか残っていない。よほど興味があったのだろう。ちくわ脳。
この日は荒れていたのでどこにもいませんでした。
鳥取砂丘
ぐずってないで砂丘本体を探索してみましょう。
ああなるほど。砂ですな。
びゅうううう
→ こうなる。
風が強い × 雨が降る = 重たくなった砂が高速で当たってくる
これは痛いですよ。耳たぶとか頬、頭皮などがやられます。
しかも謎に硬くて白いものが混じっている。何かと思ったら雹ですな。
→ 一時避難。
駐車場まで慌てて引き返す。
同行者のコートがずぶぬれ。しかも砂ジャリジャリ。
「詰み」というやつで、しばらく放心状態です。
考えてもみてください。2017年なんて、エヴァンゲリオンが実用され活躍した時代(2015年)の更に2年後ですよ。サブカル的にはすごい未来を生きているはずなのに、天気の崩れた鳥取砂丘で、現代人が手も足も出ない。こんなことあっていいのか。あったんだよ。足元に泥砂べっとり。あかん。昭和の漫画家やSF作家は、2千年代にはエアカーが飛び回る社会を描きましたが、このざまです。(※売店で長靴の貸し出し営業があります)
しかし何故か私はそんな砂丘のことが気に入りました。
観光客を全力で追い返す。そんな観光地はとても素晴らしい。
→ いく。
ちょうど雨風が止んだところを見計らって動きます。クラゲの刺胞にやられた背中の傷跡のように、砂丘に足跡が刻まれている。
どうも私が忌み嫌っていた、観光地としての砂丘ではないようで、むしろ、登山で向き合っていた山岳の厳しい表情と似たものがあります。砂丘もまた「自然」の一種だったのか。
しかし山岳の光景ではありえない、この広大な地平と、荒涼とした異世界の感。月並みに言えば、火星です。地球ではない星に一瞬で来ました。足跡はいつの時代のものでしょうか。生物がいません。痕跡だけがあります。風と砂だけが生きています。
\( ゚q ゚ )/ 砂めっちゃ痛い。
\( ゚q ゚ )/ ばかですか? 痛い。
無音で砂が巻き起こり、高速で駆け抜けていく。私は腕の良い暗殺者を連想しました。観光客の足や首を、速やかに刈り取っていくアサシンです。素晴らしい、などとうっとりしていると、あっという間に私が刈られる番になります。痛い。なんていうか無慈悲ですね。痛い。フードを深くかぶり、首や頬、耳を守ります。寒い。猛烈な冷気の風が体温を奪います。手指が数分で動かなくなります。痛い。
この風の軍団はどこから来るのでしょうか。丘を上がってみました。
痛い。
正面を向くと、顔面を砂に襲われるので、後ろ歩きをしました。
痛い。
丘の上には、物凄い風が吹き荒れていて、日本海が叫んでいました。海の向こうには、太い柱のような雲があって、おそらくはあの巨大な宮殿から猛烈な風が産み出され、送り込まれてきます。眼には見えない力は、やはり写真には写りません。見えない巨人に掴まれて押さえつけられているような、空気の圧に満ちています。
地面には、恐るべき風の力で刻み込まれた痕跡が無数にあります。
砂丘が生きている。私はここが観光地などではなく、遙かに巨大な化け物であると知りました。
生きている。
手指が凍るんでう ( ゚q ゚ )
帰ろう ( ゚q ゚ )
「逃がさない」「ただでは帰さない」とばかりに、砂走りが回り込みます。
ここはどこなのでしょうか。私はふと幻惑に囚われました。「ようこそ、こっち側の世界へ。」という声です。以前からしばしば自覚していたことではあります。登山で厄介な難所に迷い込んだり、虚無的な建築物や住宅街に立ち入ったりした際に感じたもの――自分の意思を超えた、異界のようなもののことです。
それに触れることは、インスピレーションの源泉となりえます。が、慣れ親しみすぎると、日常の世界に戻って来れなくなる恐れもあります。
痛い。
砂が痛い。
砂が痛いので我に返ります。CHAGE&ASKA「RED HILL」のことなどを思い浮かべました。80年代から90年代にかけて、PVにおいて灼けた砂漠で歌うのは予算のついたアーチストの特権でありステータスだったように思います。いい時代でしたね。あっ現世に戻ってきた。ASKA元気かな。元気さ。痛い。
吹き抜ける砂塵は忍者のように静かに走っていて、眼にしているものは砂丘というよりも別の生物でした。丘を登った時と全く違う姿に変質していて、砂が眼に入ります。眼を開けたりカメラを構えることが困難です。砂が痛い。後日、1週間経ってもジャケットのポケットに砂がまだ溜まっています。日常と非日常がだらしねえ。
今年は例年よりも積雪が多く、溶けた雪は砂丘の地中にしっかりと蓄積され、砂漠のオアシスのような水たまりを形成していました。不思議な光景でした。本物の砂漠と異なり、そんな短時間で育成する植物はいないため、不毛のオアシスです。風が水面を撫でて、内臓のように脈打っています。
ひたひた。
全般的にひどい目に遭いましたが、異界に招かれたり帰ってきたりしたので、非常に満たされました。私は鳥取砂丘のことが好きになりました。あなたは本当は、観光地でも何でもなかったんだね。荒れ狂った何かだったんですね。本性を見せていただきありがたい。
現世には酒がたくさんある。
ちなみに鳥取砂丘・最寄りの市営駐車場に停めると500円ですが、車道を挟んで向かいに並ぶ売店で駐車すると無料です。これはメリット・デメリットがあり、今回のように天気がやたら悪い場合には、500円払ってでも砂丘入口のギリギリ近くに停めておくことの方が吉です。まさか緊急避難することになるとは思わなかった。
私が砂丘異界送りで狂ったように喜んでいる間にも、同行者は寒さや濡れや疲労や色々で死にそうになっており、慌てて最寄の昼飯スポットへ入りました。
カフェレストラン「スカット」
近くに海鮮丼を出すお店もあったのだが、誘惑に負けてパスタった。
「モサエビのホワイトクリームパスタ」(1290円)。
これが濃厚で美味しかった。エビの味が非常にキャラ立ちしていて、ソースの濃さをリードしていく。
モサエビというのは、クロザコエビのことで、あまり鳥取県外には出ないレアな食材らしい。
どうも人気店なようです。サイン文字は解読ができません。誰がきたんだろう。
なかなかシュールな店先ディスプレイ。
じとっとした眼でお菓子のようなものを食んでいる女子。悪魔的だ。
ここにて作戦会議を急遽開き「次にどこへ行くべきか」を検討するものの、全く候補がない。ないのだ。鳥取県内縛りプレイは難易度が高い。たいがいの珍奇な旅をこなしてきた私だったが、鳥取は厳しい。砂丘の次に行くところがないのである。まさかと思ったが鳥取城か青山剛昌ふるさと館、それぐらいしかない。うわあ。
※迂闊なことに「植田正治写真美術館」の存在を完全に失念していた。我ながらおしいことをしました。あああ。
余部鉄橋に行くか、倉吉に行くか、島根まで足をのばして境港などを探訪するしかないのであった。そして、結局、余部鉄橋を経由して関西へ戻ってきた。最後の最後まで雹にバチバチに降られた日であった。黒魔法めいた天候であった。
<おまけ>
すなば珈琲 鳥取駅前店
宿を素泊まりにしたので、安くつく代償として、朝食は自前で探さないといけません。で、よく分からないので「スタバ」と紛らわしい名称の「すなば珈琲」に行ってみることに。
駐車場の隣がえらく古いビルで、進学教室と日本通運と自衛隊が同居している。ハーモニーが心地よい。自衛隊の投げ放つ萌えキャラの撒き餌がなんとも芳ばしい。この物件の隣に「すなば珈琲」鳥取駅前店がある。
由緒正しいすなば系列。事の発端は、2012年に当時の鳥取県知事が「スタバはないけど日本一のスナバはある」と 発言して話題になったこと。その時点では日本にスタバがないのは鳥取県と島根県の僅か2県だったが、2013年には島根県に先を越され、全国で唯一スタバの無い県となった。
2014年、すなば珈琲がオープン。
追って2015年5月、スタバがオープン。熾烈な戦いを繰り広げる。
らくだの絵がいいよね。企画を打つのが得意なようで、独自の製品ラインナップのほか、メディアが注目するようなキャンペーンも多数講じてきたらしい。
店内入ってすぐに、少し大きめのマツコデラックスのパネルが鎮座している。土産物の販促物かと思ったら、TV番組「月曜からよふかし」で紹介されて人気が出たことへの感謝として、マツコへの歓迎の意を込めて特等席を開けているとのこと。
店内には非常に若い旅行客が多数。春休みに入った大学生らが夜行バスで鳥取に降り立ち、そのまますなば珈琲へ流れてきたのではないか。
朝はモーニングのセット。
奥の茶色いのは甘めのドーナツ。おにぎりと合わせようがないので別々に食べます。食べました。食べよう。
「ホテル ナショナル」という、フォント的にパナソニック社が怒り出さないか心配な物件を発見。アルミめいた外観の安っぽさが危険な魅力を放ちます。廃墟ではなく現役の物件でした。ふう。
鳥取は何もない・・・ あるんだけれどもなかなかない・・・
けど面白い。
完