伊吹山登山(後編)
深夜1時半。携帯のアラームでのっそり起きる。
眠い( p_・)~゜
バナナ食ったり、インスタントのスープをコトコトやって暖をとる。
荷造りをし、大概のものは担いでいく。寝具やコッヘルはテント内に置いて2時半に出発。
(この日は、出発時には夜空も晴れていたのに、下山時から雨が降り続けたので、
テント周辺の片付けと戸締りをきちんと行ったことに非常に意味があった)
真っ暗な中を車で移動し、登山口から正々堂々と入る。
暗いので写真がありません。
登山口直前に千円の駐車場があるので停めておく。他に客おらず。
ここから暗闇の、登り約4時間弱バトルが続く。
しばらくはごく普通の山の中を登る。
木々に覆われており、時期がよければ絶好のハイキングになるだろう。
少し傾斜が強い。
あれ?
深夜で森の中なのに「真っ暗」ではない。これは予想外だった。
月の光はとても明るかった。
不覚にも、深夜登山対策に持参したはずのヘッドライトをカバンの何処かにやってしまい、よく分からなくなったので放置していたのだ。その上、ハンドルを手回しして充電するタイプで、事前に作業はしていなかったから頭に巻いていたとしても電気は付かなかっただろう。
ウェアのポケットにはマグライトを入れておき、電池の節約のため普段は消しておき、足場の不確かなところでその光を追った。
片手が塞がって使えなくなるが、まだ支障なし。
月の光が明るい。楽だ。
木々に囲まれた山道を抜けると一気に開けた。スキー場の跡地に出たのだ。
道脇に並ぶ商店はどうやら廃墟と化しているようだ。看板など面構えに生命力がない。おいしそうだ。
へへへ。
(※EOS 5D Mark IIにはフラッシュが内蔵されていないため、登りはほとんど写真がありません)
本来ならここでゴンドラがあっただろうが、設備が撤去された後のようだ。
早くも道がなくなっていてどこへ進んだらいいか分からない。
が、ゴンドラが通っていたと思わしきルートの直下に道のようなものがあり、ストレートに登ることに。
部分的に道がぬかるんでいる。雪解け水のせいだ。
所々、両脇に雪が残っている。動いているので寒くはない。
3合目まで来たら本格的にスキー場だった頃の姿が広がる。
ようやく5〜6合目ぐらいまで来た。
朝の4:05。展望が開き、滋賀北部の街並みと琵琶湖らしき闇が見えた。
もっと登ればもっと美しいものが見られる! そう思うと俄然やる気になりますね。
疲労は少ない。やはり熱が抑えられているからか。
水分補給も最小限、アクエリアスをちょいちょい口に含むだけでOK.
小休止は5分程度で、ウェアの脱ぎ着でレイヤー調整をするぐらいだ。一気に登っている割に体力の消費はあまり感じない。
道は雪だらけになっていてざくざくと進むが、皆が歩いた後は踏み固められてアイスバーン化している。
ここからが難易度の上がった冬の伊吹山、牙を剥いてくるのだった。
滑る。
当たり前のようだが平たく凍り付いた路面はひたすら滑る。重心をどこにしようが、どのような角度で踏み込もうが、滑る。
何度も何度も転びそうになる。
5〜7合目あたりは旧スキー場のゲレンデらしき斜面を登るのだが、7合目を越えたあたりから一気に山頂へ向けて傾斜が増す。
本格的な登山となり、上の方はずっと雲に覆われている。
天候が荒れてきた。頂上付近からは一気に状況が変わって、横殴りの雨と雪のようなものが吹き付けてくる。風も強く、正体不明の力が叩きつけてくる。
怖かった。
純粋にそう感じた。
月の光はあれど、暗闇に限りなく近い中で、霧が視界を支配した。前も後ろも、山肌も見えない。
轟々と好きなだけ風が暴れていて雨が吹き付けてくる。
出発時にザックカバーが見付からなかったから諦めていたが、リュックが濡れるということに対して意識が持っていかれ、モチベーションがだだ下がりする。あーあ、中の物が濡れるんだろうな・・・夏でもないからまた乾くのにすごい時間がかかるんだろうな・・・けど出発の点検時にカバー無かったもんな・・・こんなんじゃ登山者失格だ・・・等と、いちいちそんなことに気を取られているから、
ツルッ
( ・_ ;)あっぶねえええええ!
こんな崖みたいな山際から落ちたら簡単に死ぬぞ!
凍結に次ぐ凍結をなんとか乗り越えて、
5:45. たぶん9合目付近?
まっくらにも程がある。
そして霧で真っ白。雨、雪も着実にジャブを打ってくる。
足もとは雪orアイスバーン。なんだこれは。
いい加減、げんなりしてきたところで、山頂を示す看板が登場し始めた。
もう少しだ! 人間、明確な目標を見つけると一気にやる気が出る。暗中模索の時が最もキツい。
はぁはぁ言いながら山頂に到着!
・・・しかし、そこは相変わらず真っ白で真っ暗な荒涼たる死の世界だった。
山小屋のたぐいが通年無休で営業しているとの話をどこかで聞いたのだが違ったか・・・
しかしこのままでは、レインウェアを着ているとは言え体温を奪われて大変なことになる。
風が凶悪だ。この暗闇も良くない。
精神的に塞がってくる。早く・・・早く太陽が昇らないかなあ。少しでも暖かい空気になれば。
( ・_ ;)あっ。
お堂が緊急避難所として開放されている!!!
やった!!!
原始仮面ライダーのような不可解極まりないお札を見つめながら、荷物を下ろしてとにかく休憩。
はぁ。。。
アンタ一体何なんだ? 人類の祖先か?
雨と雪と風を防げるというのは、消耗が全く違う。命拾いをした。
ありがとう
ありがとう
・・・
・・・・
( >_<) さむい。
これは発狂する。
さwww むwww いwww
お堂と言っても気温は外部と変わらない。
温度計が無いので詳しいことは分からないが、厳しい底冷えを醸しているので、マイナス何度かはあると思う。
火を焚くわけにもいかない(あたりまえや)ので、上下に着こんだヒートテックを発動させるべく無駄にウロウロ、ウロウロ動き回る。
菓子、あんパンなどをちびちび食べて栄養補給する。
寒いうえに暗いからやることがまるで無い。外に出てもカメラが濡れるので撮影もできない。
じりじりとした40分が経過した。「覚心堂」というらしい。
へー。
おれをあっためてくれ。
扉の外は地獄です。
雪山の山頂でテント張って野営したらどうなるんだろうか。
お札がいちいち謎すぎる。
なんだこのSFがかった宇宙人みたいなのは。
日本には古来こういうのが出入りしていたのか。
チップスターをばりばり食う。
いかん、普通に眠くなってきた。しかしこんな極寒の中で眠ったら確実に全身が冷え切ってしまう。
6:45頃、表が白み始めた。何となくだがそれまでよりずっと明るい。
別に雨風が弱まったこともないが、陽の下で山頂はどのような姿をしているのか見てみようと思う。
なんということでしょう。虚無が広がっていました。
シンゴ氏と二人で散策してみたが、山荘は何軒かあれど、いづれも閉鎖している。
思えば道中にも山荘めいた小屋やトイレがあったが、どれも閉山しているからきっちり施錠されていた。
シーズン時に来ればこれらの施設が開いていて、土産物を買ったりうどん食えたりするんだなあ。
すっげえひんやりするんですけど。
伊吹山頂。
最初、「このくそ寒い中、誰か仁王立ちになってる!!!」とびっくりした。
あまりに動かないので怖くなって見に行ったらオブジェだった。
雨や雪のようなものは降り続いていて依然油断できない状態が続く。そしてさむい。
結局、ご来光の方角すらよく分からなかった。
なんとなく曖昧に全体的に明るくなってきただけという。
7時をメドに出発する。もう眠気も疲労もなかなかの蓄積だ。
ここから下山に。
真っ暗な中を歩いてきたが、その全貌が明らかになる。
山頂〜9合目の道だけはこのように両脇が開けている。
9合目以降は山肌の斜面に取り付いて登り降りするのでずっと下界が見える。
足もとズクズクのように見えて実はしっかり凍っている。
もっと積雪量が増せば逆に歩きやすくなるだろうか?
山頂〜7合目あたりは概ねこうした低木、草だけしか生えていない。
風が吹き付けてくる。明らかに天候が悪い。
暗い中で歩くのは不安だったなあ。
踏み外すと一気に滑落します。
こんなに真剣に物事に取り組む機会もそうそうない。
この道、雪でふわふわざくざくしているように見えて、しっかり凍っていて大変です。
8合目。地味な祭壇が。
この石が御神体? いやそんなはずは・・・
7合目と8合目の間ぐらいで、突然、霧がふわっと晴れた。
なんということ! これが本当の景色だったのか!
巨大ヘリポートのようだ。あれが5合目あたりのゲレンデか。
・・・
ちょっと待ってくれ、
もしかして今、頂上に戻ったらもっと美しいものが見られるのか???
(・x・)協議。
→頂上へ引き返す。
うおおおお。
ハァハァ。
あっ。
また曇った(*`д´)凸 フ●ック!!!
おいちょっとがんばってくれ、
しばし待てども霧は止まない。いや、これはどうやら天気がどうとかいう以上に、
8合目以上には常に霧だか雲だかが取り付いていて、どうにもならないのではないか。
神々しい景色を拝むつもりであったが、神は気紛れだ。殊更にいじわるをする。
がっかり下山再開(・x・)
体力ロス。息が切れる。
降りてくると晴れるので視界がどんどんクリアになる。
つくづく伊吹山の光景は人工的だ。
雨と風はマシになった。
カメラが濡れなければ気兼ねなく撮れるので非常に有難い。
何度も転びかけるがそこは気合いで乗り切る。
赤土を吸った雪と氷は時折、血に染まった道のように見える。
漫画のようにツルツルする。
アイゼンがほしいです。
またガスってきた。
昨夜はずっとこんな感じで、吹き付ける風の吠える声ばかりが響いていた。
もし子供がぐれたり傲慢になってきたら、厳寒期の山に叩きこんだらいい。
治る気がする。
あっという間に山頂から2時間半が過ぎていた。不思議なことに、出発直後から時間の感覚がない。
他の人の登山ブログなどを見ていると、非常に細かく通過ポイントと時刻・所要時間を記録していたりする。
私にはまだ、あまりペース配分の意識がない。
トップは師匠に任せてあり、彼はいつも引率するときよりハイペースに飛ばす。
私は彼に付いていくことで自動的に鍛えられる。
時折、地図を見ながら標準所要時間との差を確認する。
私が立ち止まって撮影をする分だけロスが細かく発生している。これがなければもっとスピーディーな登山になるのだが、平易な山、低山であろうとも、日常的には得難い異界に突入してしまうので、写欲は尽きない。
何もない。
ここで厳寒将棋とかやったらかっこいいだろうなあ。
極寒百人一首でもいいなあ。
あほか。
9:06. あほなことをぐるぐる思いながら5合目。
この建物はいわゆる売店小屋らしいが冬季は閉鎖。てっきり廃墟かと思ったが違うようだ。
5合目から下は樹木が普通の山と同じように多く、アイスバーンもなくなって実に歩きやすい。
9:21. 3合目を見下ろして。
伊吹高原ホテル、レストランなどが見える。
これらは現在「ピステジャポン伊吹」が管理・運営しているので、おそらく春からは開放されるはず。
しかし周囲が若干廃墟的な匂いも醸しだしていて、気になる。
気温が高く、日光もよく当たる平地のため、地面がかなり水溜り化している。
履いていた靴がオールシーズンの登山靴で、さすがに水の中は入れないため、迂回するのに手間がかかった。
びしゃびしゃですよ。いっそもっと冷えて凍結してくれた方が、ぬかるみより遥かにマシです。
スキー場として稼働していたであろう時代の設備はことごとく解体されているが、残骸が所々に放置されていて味わい深い。
あと十年もすればいい味に。
作業車が頻繁に乗り入れている。轍が全部水溜り化していて歩くのが非常に手間。
下山中は高原ホテルのこともすっかり廃墟だと思い込んでいたので、内部散策したくてしょうがなかったが、歩いていた道からけっこうな距離と高度があって面倒くさくてカット。シンゴ氏はどんどん先に行ってしまっていたし、ここにきて疲労が全身を襲い始めた。ぐええ。おとなしく下ります。
しかし他に人が誰もいない。
そういえば月曜なんだった。いるわけがないか。
9:31. 3合目にて。
頂上付近が常にガスっている。あのまま滞在して粘っていても今日一日は何も拝めなかったであろうなあ。
早々に断念して正解だった。
悪いことに、せっかく下山してきたというのに、今度は本格的な雨が降り始めた。
近畿全域に雨雲がかかっていたらしい。えー。
レインウェアのおかげで体は大丈夫だが、ザックが・・・ザックが・・・。
再びテンション下降気味。
爽やかな秋のハイキングのような一枚になってしまった。
全然そんなことなくて、雨と足もとのぬかるみが超ウザかったです。
爽やかな高原といった雰囲気が漂う。こういう情景は登り始めに見ながら行きたかったな・・・。
この後、ぬかるみに足を取られて師匠が転倒します。
ドロでぐちゃぐちゃに。
( >_<)ギャー。
10:12. 登り始めの森林歩道に帰ってくる。
うわーさわやかだー。
内心「雨うぜえ!」「もうゆるしてくれ雨」「ザックがぐちょぐちょ」
畜生。
そういう感じの伊吹山でした。
たぶん普通に日中登ったら、景色が良くてそれなりに楽しかったと思いますが、
なんか単純に荒行でした。
ご来光が撮影できなかったのは残念です。
ではではまた・・・。